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髑髏天使
第五十一話 解放その六

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「どうもね」
「それも別に気にすることはない」
「それもいいの」
「俺はそう思う」
 若奈にだ。また述べたのだった。
「それもな」
「そうなのね」
「大切な相手のことを考えるのはだ」
「それは?」
「当然だ」
 こう若奈に言うのだった。
「それもだ」
「そうなのね。そう言ってもらえたらね」
 微笑んでだ。それで言う若奈だった。
「嬉しいわ」
「そうか」
「ええ。有り難う」
 また微笑んで告げる若奈だった。
「それじゃあだけれど」
「何だ、今度は」
「そろそろ講義ね」
 腕時計を見ての言葉だった。左手のだ。
「そうね」
「そうか。もうか」
「ええ、じゃあお話はこれで止めて」
「それでだな」
「お勉強ね」
 そちらに向かうのだった。二人は今は大学生であった。牧村は今は静かに時間を過ごしていた。人間としてのかけがえのない時間を。
 そうして次の日だった。夕食の時だった。
 母にだ。こう言われたのだ。この日の食事はコロッケに玉葱と人参のコンソメスープ、それに茸のバター炒めであった。それと御飯だ。
 そうしたものを食べながらだ。母は言ってきたのである。
「どう、今日のお料理は」
「味か」
「うん、味どう?」
 こう息子に尋ねてきたのである。
「それは」
「美味い」
 牧村は一言で述べた。
「洋食も好きだ」
「そう。それは何よりよ」
 母は息子のその言葉にだ。笑顔で言うのだった。
「美味しいって言われるとこっちもね」
「作りがいがあるか」
「そういうことよ」
 そういうことだった。
「今日は献立に困ったし」
「困ってたのか」
「何を作ろうか考えていたのよ」
「しかし母さん」
 父が母の横から言ってきた。父も共にいるのだ。
「今日のメインはコロッケだよね」
「ええ、そうよ」
「コロッケはあれだろ。買ってきたものだろ」
「だから。何にしようかってね」
 母は夫にもこう言うのであった。
「困ってて」
「それでコロッケを買ったのか」
「お魚は昨日したじゃない」
「かれいの煮付けだな」
「だから今日はそれはできないし」
 魚がそれで消えたというのだ。
「お肉も。ちょっとねえ」
「駄目なのかい?」
「おとついしたから」
 それで肉も消えたというのだ。
「鶏肉は明日するつもりだし」
「それで今日はコロッケなのか」
「そうなの」
 夫に顔を向けて話す。二人は横に並んで席についている。
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