第五十八話 邪魔大王国の最期(後編)
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「だが、だ」
「だが」
「といいますと」
「それぞれのブラックホールの間の間隔は大きい」
彼が指摘したのはこのことだった。
「それもかなりだ」
「といいますと」
「その間を通ってですか」
「防衛ラインの後方に回り込む」
そうするというのである。
「精鋭部隊はだ。主力はそのまま防衛ラインの前に展開する」
「迂回」
「それをですか」
「そうだ、倣うとはこのことだ」
こう幕僚達に話す。
「アッディーン副大統領にな」
「彼が得意とするその奇襲戦術をですね」
「ここで」
「それができるのは彼だけではない」
シャイターンはさらに言った。
「私もまた、だ」
「それを見せる為にもですね」
「あえてなのですか」
「そうだ、あえてだ」
それをしてみせるとだ。彼は言うのであった。
そうしてだ。幕僚達にあらためて告げた。
「精鋭部隊は十個艦隊だ」
「はっ」
「では残りの軍で」
「敵の防衛ラインの前面に展開する」
こう言うのであった。
「まず精鋭部隊は速度を速めブラックホールの間を通り抜ける。これを指揮するのはだ」
「誰なのでしょうか」
「それは」
最も重要な問題であった。こうした作戦では何よりも指揮官の能力が作戦の成功を左右する。だからこそだ。彼等もシャイターンにこのことを問うたのだ。
そしてだ。シャイターンの答えは。
「私だ」
「閣下がですか」
「自ら率いられるのですね」
「そうだ、そうする」
こう言うのであった。
「主力部隊はフラームとアブーに任せる」
「我々にですか」
「そうして頂けるのですね」
「そうだ」
その場に共にいた弟達に対しても述べた。まさにその通りであるというのだ。
「できるな」
「はい、お任せ下さい」
「ここは」
弟達は兄の言葉にすぐに答えてきた。
シャイターンはここでだ。とりわけフラームを見て言うのであった。
「フラームよ」
「はい」
「御前は軍を率いることは少ない」
「確かに」
「そもそも文官だ」
彼が政治を司りアブーが軍務を司る。そうして国家元首である長兄を支える両輪となっている、シャイターン家ひいてはティムールはそうなっているのだ。
しかし最近ではフラームが軍を動かすこともあればアブーが政治を見ることもある。これは長兄であるシャイターンがあえてやらせていることなのだ。
そうした背景があってだ。彼は今次弟に言うのであった。
「だが。それでもだ」
「ティムール軍の者でもあります」
「そうだ、武官でもある」
このことを告げるのだった。
「階級は何だ」
「上級大将であります」
「なら上級大将としての働きを見せてもらうぞ」
「わかりました。それでは」
「右翼は御前だ」
そのフラームだというので
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