第五十六話 邪魔大王国の最期(前編)
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「心までは変わっちゃいなかった」
「ああ。それに気付いた時俺は悩まなくなった」
「恨んだり憎んだりすることもなくなった」
「俺は人間だ。それがわかったからな」
「その通りだね」
「今まで悩んでいたのが馬鹿馬鹿しくなった。俺は人間だって確信できたからな」
「それさえわかればいいんだ」
「ああ」
今度は宙が頷いた。
「心さえ人間だったら。それで人間なんだからね」
「わかるのか」
「ああ。僕もそうだったからね」
「あんたも」
「僕のことは聞いてるね」
「ああ」
今度は宙が聞き役になった。万丈の話を聞く。
「僕の父は。メガノイドを開発したんだ」
「そうらしいな」
「能力だけでなく。そのエゴまで強化した最悪のサイボーグだった。奴等は人間じゃなかった」
「そして火星で奴等を滅ぼしたんだったな」
「酷い戦いだった。そこで僕は地獄を見た」
「俺と同じだな」
「そうだね。そしてコロスもドン=ザウサーも倒した。けれど・・・・・・残ったのは」
その声に血が滲む。
「何もなかった。僕には何も残らなかった。血に濡れた腕以外は」
「そして地球に戻ってきたんだな」
「そうさ。ダイターンと一緒にね」
目にも血が滲んでいた。
「火星から持って来た金塊で財閥を作って今は暮らしているけれど。やっぱり僕には何もないんだ」
「それは違うな」
「えっ」
「あんたは何もないわけじゃない。それどころか他の奴等が羨むようなものばかり持っているじゃないか」
「お金の話はなしだよ」
「それなら俺だって持っているさ」
宙はそう答えて笑った。
「伊達にプロのレーサーやってるわけじゃない。店もあるしな」
「しっかりしているんだね」
「そんな下らない話はしないさ。お互いな」
「ああ」
「あんたはいつも側にビューティやレイカがいるじゃないか」
「あっ」
言われてハッと気付いた。
「それにトッポにギャリソンさんも。あんたは一人じゃないんだぜ」
「そうか、そうだったね」
「俺も途中で気付いたのさ。俺には母さんもまゆみもいる。そしてミッチーもな」
「お互い一人じゃないということだね」
「そうさ。だから何もないわけじゃない」
「それどころか一杯持っているというわけだね」
「そうとしか思えないだろ。だから暗くなることなんてないさ」
「そうだね」
「それじゃあ似た者同士一杯やろうぜ。実はバゴニアでたっぷり買い込んでいるんだ」
「僕はお酒には五月蝿いよ」
「これもお互い様だぜ。じゃあ今日は二人で心ゆくまで飲むか」
「何か僕達が一緒にいるとブライト大佐やアムロ中佐を思い出すっていうけれど」
「余計面白いじゃないか。それじゃあ二人で騒ごうか」
「いいね」
「皆驚くぜ。何でここにブライト大佐とアムロ中佐がいるんだって
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