第五十二話 狂気の魔装機
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それにマーベルが答えた。
「脱走」
「それでバゴニアの前線は大騒ぎよ。さっき偵察していたらそんな話を聞いたわ」
「何でまた脱走なんか」
「多分シュメル師のことでしょうね」
マーベルの考えはそこにあった。
「自分の恩ある人が捉われたのだから。そうした行動に出てもおかしくはないわ」
「それで脱走ですか」
「可能性としては高いのじゃないかしら」
「ううん」
皆それを聞いて考え込んだ。
「言われてみれば」
「それでどうするつもりなのかしら」
「少なくとももうバゴニアにはいるつもりはないでしょうね」
マーベルはまた言った。
「覚悟のうえでの脱走なのは間違いないでしょうし」
「そうか」
「何はともあれこれでバゴニア軍は一人有力なパイロットを失ったわけだ」
「そして剣の使い手も」
「けれどゼツはそれで怯むようなことはないわよ」
ウェンディはここでも言った。
「気をつけて。必ず何かしてくるから」
「はい」
「そして何があっても感情的にならない。いいわね」
「それは何故」
「感情的になればそれだけ周りが見えなくなるわ」
彼女は言った。
「それは避けなくてはいけないわ。とりわけ貴女はね」
「わかってます」
ロザリーはウェンディの言葉に頷いた。
「覚悟はもう決めていますし。何があっても」
「そう」
ロンド=ベルは全体的に重苦しい空気に覆われていた。そして会議を打ち切りとりあえず解散した。皆それぞれの部屋に戻った。
ロザリーもそれは同じであった。だが戻ってすぐに誰かが部屋の扉をノックしてきた。
「誰?」
「私よ」
それはウェンディのものであった。ロザリーはそれを聞くと部屋の扉を開けた。そしてウェンディを招き入れた。
「どうしたんですか?」
「さっきの話の続きだけれどね」
ウェンディは部屋に置かれていた椅子に座りながら言う。椅子はロザリーが勧めたものであった。
「先生がどうなっていても、もう覚悟はできているの?」
「はい」
ロザリーはそれに頷いた。
「もう。何が起こっても驚きません」
「そう」
ウェンディはそれを聞いて彼女も頷いた。
「だったらいいわ。貴女に伝えたいことがあるの」
「それは一体」
「ゼツのことよ」
彼女はゼツについて言及をはじめた。
「ゼツのこと」
「そうよ。彼が進めていた研究だけれどね」
「はい」
「人間をね、使ったものなのよ」
「人間を」
「だから何があっても動揺しないでね」
「はい」
「何があっても」
そう言い終えるとウェンディは部屋を後にした。そっと一人姿を消した。
後にはロザリーだけが残った。彼女は険しい顔になっていた。
「もし先生が奴に殺されていたら」
その時はもう決めてあった。
「あたしが奴を
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