第五十一話 ファイアーボンバー
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「少しな。今は敵味方だそうだな」
「貴殿と同じだった」
ハマーンは苦虫を噛み潰すようにして言った。
「今まではな」
「そうか」
「だが貴殿は妹のもとに帰るのだな」
「リリーナがそれを望んでいるのならな」
彼の返答はこうであった。
「私はあの娘を守ることが宿命のようだ。それに従う」
「守るのか」
「所詮私にできることはそれだけだ。私はトレーズでもなければリリーナでもない。単なる軍人だ」
「本当にそう思っているのか?」
「それはどういうことだ」
ミリアルドはハマーンの言葉に顔を向けてきた。
「ピースクラフト家の嫡子。それだけではないと思うが」
「買い被ってもらっては困る」
だがミリアルドはその言葉を意に介そうとはしなかった。
「私は只の軍人だ。それ以外の何者でもない」
「では軍人として生きていくのか」
「それ以外にあるまい」
彼は一言こう言った。
「今までの仮面の報いなのだからな」
「シャアとはまた違うな」
「ジオンの赤い彗星か」
「あの男も私の許を離れた」
「・・・・・・・・・」
「そして今貴殿も。私はどうやら男運は悪いらしい」
「それを苦としているのか」
「それが許される状況でもない」
笑ってこう返してきた。
「さっきも言ったが私はミネバ様の為、ジオンの為にいるのだからな」
「そして動いている、か」
「そういうことになる」
「そしてその障害となるものは全て取り除いていく、というわけか」
「それをわかっていて貴殿も袂を分かつのだろう」
「それも否定しない」
「ではな。行くがいい。トールギスは整備してある」
「用意がいいな」
「せめてもの餞別だ」
ハマーンは言った。
「ただし敵として会ったならばこちらも手加減はしない」
「それはお互い様だな。では」
「さらばだ」
こうして二人は別れた。赤い巨艦からトールギスが飛び立った。ハマーンはそれを一人艦橋から眺めていた。
「男運が悪い、か」
そして自嘲するようにして呟いた。
「そうかもな。だがもう言っても仕方がない」
「ハマーン様」
ここで後ろから声がした。
「どうした」
「ミネバ様が御呼びですが」
「ミネバ様が」
声は侍従のものであった。ミネバの侍従の一人である。
「少しお話されたいことがあるそうですが」
「わかった」
ジオンの主といってもまだ年端もいかぬ少女である。常に誰かいないと寂しいのだろう。そうした意味でもハマーンは彼女にとってなくてはならない存在であった。
「わかった、行こう」
ハマーンもそれはわかっていた。頷きそちらに脚を向けた。
そして艦橋から姿を消した。彼女の全てはミネバの為にあった。だからこそ行かねばならなかったのだ。
第五十一話 完
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