第五十話 ロザリーの真実
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盗み聞きする気はなかったがな。けどそれがいいと思うぜ」
「そうか」
「俺達は軍人なんだからな。命をチップにして金を稼ぐ」
「そういうものか」
「俺はそういう考えさ。あんたとは大分違うようだがな」
「そのようだな」
「まあそれはどでもいいことさ。俺は軍人の仕事だけする。それ以外は何もするつもりはないぜ」
「シビアなのだな」
「当たり前さ、何で給料の分以外のことをしなくちゃならねえんだ」
トーマスはこう言った。
「俺は金の分だけしか仕事はしねえ。後は知ったことじゃねえな」
「貴殿にとって戦争はそういうものか」
「だからそれについての議論はしねえって言ったろ」
トーマスはまた言った。
「だからお互い詮索なしだ。けど一つ聞きたいことがある」
「それは何だ」
「あんたさっき気分は悪くないと言ったな」
「うむ」
「それはまたどうしてだい?何か特別な事情があるのか?」
「この景色を見たまえ」
ジノはそう言ってギンシャスプラスの右腕で下を指し示した。
「見事なものだと思わないか」
眼下には青い谷と緑の山が連なっていた。そしてそれは何処までも続いているようであった。
「まあ確かにな」
トーマスもそれは認めた。
「ロッキーとタメを張れるな。見事なモンだ」
「ロッキーか」
「知ってるのか」
「地上の世界にあると聞いたことがある。だが私はそれよりもアルプスの方に興味を感じる」
「またどうして」
「あの少女の話を聞いたのでな」
ジノは急に優しい顔になった。
「親友の励みで立ち上がる麗しき少女の話・・・・・・。何と素晴らしいことだろうか」
「またえらくロマンチストだな」
「いや、違うんじゃないのか」
素直に感動を述べるトーマスに対して部下達は少し違っていた。
「俺その話知ってるんだけれどよ」
「どうなんだ」
彼等はヒソヒソと話をしていた。
「可愛い女の子が主人公なんだよ」
「本当か!?」
「ああ。ハイジっていう元気な女の子でな。そしてその友達はクララっていうんだ」
「ふむ」
「立ち上がるのはその女の子なんだ」
「そうなのか」
「それがまた可憐な少女なんだよ。そっちの趣味の奴にはたまらないようなな」
「おい、それはもしかして」
「ああ」
彼等の声はさらに小さくなった。
「あの鬼のバレンシア少佐が」
「まさかな・・・・・・」
「そこの二人」
「は、はい」
「何でしょうか」
二人はその当人の声を聞きビクッと背筋を伸ばした。
「何か見えたか、そちらでは」
「い、いえ何も」
「異常なしであります」
「そうか」
ジノはそれを聞いて頷いた。
「貴殿の方は」
「こっちも何ともねえぜ」
トーマスはそう答えた。
「のどかなもんさ。このまま何時までも飛んでいた
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