第四十八話 新たなる来訪者
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「天才というやつだな」
「天才か」
「ああ。若しかするとサンシロー以上のな」
「いや、それはないな」
だがピートはサコンのその言葉を否定した。
「何故だ?」
「サンシローは俺達の中でも最も才能に恵まれた奴だ。あいつよりそういった才能に長けている奴はそうはいない」
「ククルはそこまでではないというのか」
「少なくとも俺はそう思うがな。だがこれはサンシローには言うなよ」
「何故だ?」
「あいつはすぐ調子に乗るからな。馬鹿なのもそうそう上にいる奴はいない」
「そうか。じゃあわかった」
「しかし問題がある」
「ククルが人間だということ自体がだな」
「そうだ。やはりおかしい」
彼は首を捻ってそう言った。
「何故奴等の中に人間がいるのだ。しかも女王として」
「宙の奴に聞いてみるか?」
「それもおそらく無駄だな。ククルのことは宙の方が驚いていた位だ」
「そうか」
「今は調べるとしよう。まだはじまってもいない」
「ああ」
「何かわかったらまた言う。それまで待っていてくれ」
ククルに関してはそれで終わりであった。だが当のククルはそれで終わりではなかった。
「おのれゼンガー=ゾンバルト」
彼女は帰還した邪魔大王国の地下基地において憎しみに満ちた声を漏らしていた。
「よくも一度ならず二度までも。わらわに恥をかかせるとは」
「おいたわしや」
ミマシがそんな彼女を慰めようとする。
「日之本の国の正統なる統治者が。あの様な一介の武人に」
「戯れ言を申すな」
だがククルは逆にミマシをそう言って叱った。
「あの男は一介の武人なぞではない」
「では一体」
「敵だ」
そして一言こう言った。
「わらわにとって不倶戴天の敵だ。それ以外の何者でもない」
「それでは我々にとっても」
「それもまた違う」
それもまた否定した。
「あの男はあくまでわらわ一人の敵なのだ」
「ククル様御一人の」
「そうだ。だから手出しは許さぬ」
有無を言わせぬ口調でそう言った。
「よいな。手出しをした者に対してはわらわが直々に手を下す」
声に冷徹さまで漂わせる。
「決して許さぬ故。覚悟するがいいと皆の者に伝えよ」
「ははっ」
ミマシは最後まで聞いたうえで頭を下げた。
「それでは皆にはそう申しておきましょう」
「うむ。頼むぞ」
「はっ」
ミマシはその場から姿を消した。そしてククル一人となった。
彼女は暗い玄室に一人いた。そして青く燃える蝋燭の火を一人で眺めていた。
「青い炎か」
邪魔大王国の、ククルの力を現わすものの一つであった。今この炎はククルによって燃やされているものだからである。
「よいものだ。まるで人の命の様じゃ」
そう言って笑った。凄みのある笑みであった。
「命は必ず消えるも
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