第68話 政争の足音の予感
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、あなた様に貸しを作りつつ、取り込もうと考えるのが自然です」
揚羽の言葉を聴いて、うんざりな気分になりました。
私は宮中の勢力争いは御免被りたいです。
そう言えば史実で霊帝は暗愚な劉弁より、いくらかましな劉協を皇帝したいと思っていたはずです。
そして、霊帝が死ぬ前に宦官の蹇碩に次期皇帝を劉協にと遺言を残します。
彼の死後、蹇碩は彼の遺言を実行すべく動き、劉協即位の障害となる何進を誅殺しようとしますが逆に殺されます。
完璧過ぎる程、死亡フラグ確定です。
事が起きたら真っ先に私が蹇碩の首級を上げねば私の身が危険に晒されます。
「陛下の意図は知らないが、私はこの機会を利用させて貰うだけだ。今回の出征には冥琳を軍師として連れて行く。揚羽は別駕従事に任じておく。機を見て冀州入りして治所の地ならしを頼む。そのとき、兵器工場の職人とその家族、機材全てを星の故郷に秘密裏に運び込め。兵器工場の痕跡は残すことの無いよう十分に気をつけておいてくれ。詳細については帰って詰める」
私は揚羽にしか聞こえないように言いました。
「正宗様、畏まりました。それと先程の後継者争いについてご存知の事があれば、対策を練っておきますので、全て話して置いてください」
揚羽は私の顔を詰問するような目で見て言いました。
「そんな目で見なくても全て話すよ。しかし、同じ刺史であれば、青州刺史にして欲しかったな」
「陛下は正宗様を完全に信用していないのでしょう。青州は正宗様の本貫ですから、危険だとお考えになったと思います。しかし、正宗様は何故、青州に拘られるのですか?」
揚羽は無表情な表情で淡々と話していましたが、急に不思議そうに私に質問しました。
「私が青州に拘る理由は、あそこには火薬の原料となる硝石の鉱床があるからだ」
「そういう理由であるなら、頷けます。銃を使用するには火薬は欠かせませんからね。正宗様が渇望する理由が分かります」
揚羽はウンウンと納得いったように何回も頷いていました。
「大事なことを忘れるところでした。麗羽殿の件は正宗様にお任せいたします」
揚羽はボソッと私が憂鬱になることを言いました。
「確かに……、それは私にしかできないことだな……。揚羽、麗羽の件はお前に頼めないか?」
私は揚羽の表情を伺いつつ言いました。
「無理です」
揚羽は短く言うとソソクサと早足で私の先を行きました。
私が自宅の屋敷に戻ると冥琳が出迎えてくれました。
「正宗様、お帰りなさいませ」
「ただいま、冥琳。陛下から勅命が出て私は左将軍と冀州刺史に任官され、近々、冀州へ黄巾賊討伐に出向かねばならなくなった。お前も来てくれるか?」
「左将軍でござ
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