暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第68話 政争の足音の予感
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
霊帝の勅命を受けた私は議場を後にすると、歩きながら周囲を確認し直ぐ後ろから付いて来る揚羽に目配せをしました。

「正宗様、何か?」

揚羽は私の横に付くと話しかけてきました。

「揚羽、お前は今回の私の任官をどう見る?」

「明らかに何か意図があると思います。陛下は一見暗愚に見えますが、あれは奸臣に惑わされているためにそう見えるだけです。左将軍は九卿に比肩する官職。それに、意味もなく反乱の危険性を孕む将軍位と刺史の官職を兼任させるわけがありません。十中八九、面倒事に巻き込まれるでしょう」

揚羽は真剣な表情で私に言いました。

「任官の際、私も嫌な予感はしていたが……。陛下は私に何をさせようとしているか想像はつく。多分、皇子の世継ぎ争いに私を巻き込む気だな」

私は顔を少ししかめながら、空を見やりました。

「正宗様、御明察です」

揚羽は軽く頷きました。

「ならば、宮中に私がいなければ意味がないのではないか?」

「陛下は正宗様を文武官に影響力を持つ人物にしたいとお考えなのでしょう。正宗様は司隷校尉としての行政手腕は評価されていますが、軍務の実績は皆無です。宮中に上がる前に山賊を討伐していたことは参考程度で評価にならないでしょう。張譲が正宗様を推挙したのが良い例です」

揚羽は前方を見て、大したことではないように言いました。

「私が黄巾賊の討伐に失敗すると思って、張譲は私を推挙したという訳か……」

揚羽から指摘を受け張譲が私を推挙した理由が得心いきました。

「張譲が誤算だったのは、陛下が正宗様に将軍位と刺史を兼任させたことでしょう。ですが、将軍位と刺史を兼任させるのはあながち的外れではないです。これで冀州での兵・糧食の調達はいくらでもできますから、黄巾賊の討伐は楽になると思います」

「だが、分からないことがある。何故、陛下は私に白羽の矢を立てたのだ。忠臣なら俺じゃなくてもいいだろう」

霊帝が私を見込んだ理由が分かりません。

「陛下が正宗様を見込む理由は簡単です。正宗様は正義感熱く、文武に優れていると世に評されています。その上、由緒正しき前漢の皇族です。陛下はこの点を重視されていると思います。後漢の皇族では帝位を脅かされる可能性がありますから。それに今の朝廷にいる前漢の皇族のうち、若く、有能、人格が清廉、荒事に長けた人物は正宗様以外にいません。陛下も正宗様が漢室を滅ぼし、新たな漢を興そうとお考えとは夢にも思っていないでしょう」

揚羽は私しか聞こえないような小声で言いました。

「陛下は今回の任官と黄巾賊の手柄で、私に恩を着せようとしているのか?」

「そうでなければ、左将軍ではなく、雑号将軍でも良かったはずです。軍務の実績のない正宗様に黄巾賊討伐の功を立てさせ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ