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SAO─戦士達の物語
GGO編
百五話 観戦者達の不安
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口から、驚きの声が漏れる。
次の瞬間、つい先ほどまでぼろマントの心臓が有った部分を、オレンジ色の光弾が貫き、一瞬で画面外へと消えた。おそらくは誰かが彼の事を狙い撃とうとしたのだろうが、弾丸は左背後から飛んできたように見えた。そんな位置からあのスピードで飛んでくる弾丸を交わすとは、凄まじい技量の持ち主だ。

そうしてぼろマントは何事も無かったかのように上体を戻すと、今度こそペイルライダーに向けて拳銃をまっすぐに向ける。

「っ、駄目っ……!」
「えっ!?」
何故そんな言葉が口から出たのか、サチ自身にも分からなかった。しかし彼女はその時には既に、自分の中で沸き起こっている感情が何なのか、はっきりと自覚していたのだ。
心臓を締め付けられ、背筋を凍えさせるような、この感覚の正体は……恐怖だ。
SAOの中で、自分が何度となく体験した感覚。モンスターを、フィールドを、ダンジョンを前にした時、必ず沸き起こったこれを、彼女ははっきりと覚えている。

『怖い……』
あるいは、単に臆病なだけとも言えるその動物的本能。
サチのそれに、あの男がはっきりと触れている。

しかしサチの声をあざ笑うかのように、引き金を引いたぼろマントの拳銃から、弾丸が発射される。
銃声が響き、小さなオレンジ色のライトエフェクトと共に真鍮色の空薬莢が飛び出し、地面に転がる。しかしそれはどう見ても残りのHPを全て削りきるような大威力の攻撃には見えない。実際に、撃たれたペイルライダーは直後麻痺から回復し、が張りと起き上がってぼろマントめがけてショットガンを向けた。

「うわ。大逆転」
そう言ったのは、リズだろうか?
しかし……銃声は響かず、また、引き金を引く音すら、その場に居ただれの耳にも届く事は無かった。ただ、ペイルライダーの手から銃が零れ落ちた、どさりと言う重い音が彼等の耳に響く。それに続けて、ペイルライダー本人の体もまた横倒しになる。それはまるで、リアリティの有る映画で誰かが銃に撃たれた際、何の抵抗も無しに倒れるそれに、酷似していた。

ヘルメットに付いたシールドの向こうで、鋭さの有る顔の瞳が突如、目一杯に見開かれた。彼が今何を思っているのか、その場に居る誰もが、言われずとも分かった。それは明らかな、驚愕と恐怖の表情だったからだ。

「な、何……?」
リーファが声を上げたその時、突然、細かく震えていたペイルライダーの体がまるで一時停止ボタンを押したかのように堅く硬直すると……白いノイズエフェクトがそのからだに走り、直後、跡形も無く消滅した。そのエフェクト光は数秒空中に留まると、凝縮して一つの文字を形作る。

《DISCONNECTION》

回線切断を意味するその言葉を黒いブーツが踏みつける。一歩前に出たぼろマントが、カメラに向かって大きく手を上
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