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SAO─戦士達の物語
GGO編
百五話 観戦者達の不安
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ペイルライダーが拡大され、他の画面が周囲に押しやられた。
実はこの時、画面の右端ではリョウとアイリが軽機関銃使いと戦っている姿が写されていたのだが、それには誰も気が付かない。

さて、麻痺転倒から十秒以上が経過しても、フレームには誰の姿も入って来なかった。が、リズがそんな様子に首を捻った……その時。

ばさっ

マントがはためくような音をたてて、誰かが画面内に割り込んで来た。徐々にカメラがズームアウトし、乱入者の全体像を映し出す。

「……ゴースト……?」
誰かが言った。
そう言いたくなる気持ちも、分からなくは無い外見だった。ボロボロの黒いフード付きのマントに、両眼の赤く光るスカルフェイスマスク。その姿は、かつてSAOの内部でアスナやシリカを(精神的な意味で)散々苦しませた、ゴースト系。アストラル系と呼ばれるモンスター達に、酷似したものだったのだ。
しかし、しっかりと見れば当然、其処にいるのは一人のプレイヤーだと分かった。二本足で地面に立っているし、左肩には大型の猟銃じみた銃を下げている。十中八九彼がペイルライダーを麻痺させた本人だろう。 遠距離から魔法の類で相手の動きを封じ、接近して物理でとどめ。こういった戦術はALOに置いてもごく一般的な物だ。
案の定、ぼろマントは懐に手を入れると……そこから小型の黒い拳銃を取り出した。だがそれは、どちらかと言うと彼が背中に釣っている大型のライフルと比べ威力が高いようには見えず、余り“強そう”と言うイメージに当てはまる物とは言えない。背中の銃では何か不味いのだろうか?そんな事を考えていた時だった。

「っ……」
息を詰まらせるように、サチが声を詰める。ぼろマントが懐から取り出した拳銃。それを見た瞬間、胸の奥底で何かが心臓を軽く締め付けるような感覚に襲われたからだ。と、同時に、背筋に冷たい空気を入れられたような感覚がして、彼女は胸に当てていた手を先程までよりも強めに握る。

『これって……』
彼女自身、その感覚が何なのかすぐには理解できなかった。しかし時間が一秒、また一秒と過ぎて行くにつれ、自分の中で顔を出したそれが、以前に経験した事の有る物だと言う事を彼女は自覚し始める。

画面の中では、ぼろマントがどういう訳か人差し指と中指を、額から胸へ、左肩から右肩へと、素早く動かしていた。所謂「十字を切る」動作だ。しかしその動作からは祈りや純真さは微塵も感じられず、寧ろ……寧ろ底知れぬ悪意を、サチはその動作から感じ取る。
同時に、胸の奥の動悸が増していく。間違いない。この感覚を自分は知っている。そう思った時、撃鉄を上げた状態の拳銃を麻痺した状態のペイルライダーに向けていたぼろマントが、突然体を大きく後ろにそらした。

「あっ……!?」
「っ!」
サチ以外の全員の
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