GGO編
百五話 観戦者達の不安
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体の現状を調査するんで、通貨還元システムが組み込まれてるGGOの調査して来いとよ。バイト代良いんで引きうけた』
『へー……うん、分かった。頑張ってね』
『おう。サンキュ』
────
とまぁ、電話口での会話はこんな感じだ。
凄まじく簡潔かつ見ようによってはそっけない会話だが、しかしリョウとサチの間ではそれほど珍しくも無いような会話であったりする。
元来、SAOの時代からリョウはサチに必要以上に自分の行く場所等の情報を伝える事が少ない。寧ろ、さしたることでも無いかのように、適当な様子で話を伝えて来る事の方が当然だったりする。余裕そうに、当然のように家から出て行き、そして当然のように帰ってくるのだ。
家に帰って来た時も必要以上に真剣な表情をしたり、考え込んだ表情を見せる事も無く、あくまでリラックスした様子でくつろぐ。彼が家の外で、敢えて言うならば命がけの舞台で戦って、感じた事や、考えた事に置いて、サチが知っている事は少ない。時折話を聞くと、その日の冒険や戦いの事を面白おかしく、まるでおとぎ話のように語ってくれる事はあっても、感じたであろう辛さや、苦悩を口にする事は無く、ただ何時ものように、当然のようにそこに居る。
サチ自身、そこにどういった意図が有るのか、うっすらとだが察していた。
だからこそ、サチはリョウが家で本当の意味で安らげるよう最大限努力をしていたのだが……
『慣れちゃ、駄目なのかな……』
隣に居るアスナから、形の無い不安のような雰囲気を感じる。きっと彼女も、自分と同じものを感じているのだろう。
リョウやキリトに対する不信では無い。何かが起きようとしているような……あるいはもうすでに起きているかのような、じりじりとにじり寄ってくるような不安の渦……
それはサチにとって、ある意味慣れた物では有る。無性に胸の奥に不安が渦巻き、一刻も早く帰って来て欲しくなる。すぐにでも自分に無事な姿を見せてほしくなる。そんな、言いようの無い、根拠の無い不安感。
それをサチは、押し込める方法を知っている。だが、今、何となくそれに疑問を持つようになってしまっている。
待つだけの期間が少しずつ、苦しくなってきている。
それが良い事なのか、それとも悪い事なのか……彼女自身には分からなかったが……どちらにせよ今ここでそれをさらけ出すのは愚だろう。
「リョウも、そう言ってたよ?キリトと同じ。アルバイトだって」
「ふぅん、バイト……ねぇ……」
リズはどこか曖昧な顔でうなづくと、「ま、どんなゲームでもたちまちコツつかむ彼奴らなら確かに適任なんだろうけど」といって、手に持ったエメラルド色のワインを一口煽った。と、再びクラインが声を発する。
「けどよ、ならなんで二人揃ってPvPの大会に出場してんだ?リサーチってんなら、
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