Mission
Mission6 パンドラ
(2) ニ・アケリア村 キジル海瀑側通用門(分史)
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鹿だったわ……」
アルヴィンはがっくりと肩を落とした。この分だとバラン以上にアルヴィンの恥ずかしい過去を仲間に暴露されかねない。
「そうか? 俺は嬉しいぞ」
ユリウスは大切なものへのまなざしをアルヴィンに注いでいる。
「生きてエレンピオスに帰って来てくれてよかった。――おかえり、アルフレド」
「っ!!」
危うく涙腺が決壊するところだったのを、アルヴィンは寸での所で食い止めた。
(『おかえり』は反則だろ、ユリ兄)
これが初めて聞く「おかえり」ではないのに、どうしてこうもダイレクトに胸を揺さぶったのか。
決まっている。ユリウスがアルヴィンの帰郷を心から祝福し、口にしているからだ。
「よかったですね、アルヴィンさん」
「ばんざーい」
「はは。ありがとよ、じーさん。あとユティ、祝ってくれんのは嬉しいが、せめて作り笑いでいいから笑顔で」
「ばんざーい?」
「それ笑顔じゃなくて寝顔。立ったまま寝るとかおたく器用ね」
「……なんか話がどんどんダッセンしてる気がする」
エルは半眼でおバカな会話をくり広げる大人たちを見上げている。一番歳が若い幼女がこの場で一番冷静だった。
「ではエルさんにもご指摘いただきましたので、改めてこれからの方針を考えましょうか。アルヴィンさんもユリウスさんもよろしいですかな?」
「あいよ。感動の再会はまたいつでもできるしな」
「エル、ルドガーたち探しに行ったほうがいいと思う!」
はい! と、教室の学童よろしく元気に手を挙げてエルが言った。
「探しにって、どこに?」
「こことか、山の中とか」
するとユティががっちりとエルの両肩を掴んだ。目が据わっている。
「あのー、ユティさん?」
「山をなめないで。素人が何の装備もなく人探しに山に入るなんてただの自殺行為。二次遭難して飢えて渇いて、動く力もなくなったとこを魔物にじーーーっくり、食べられるのがオチ」
「じ、じっくり!?」
急に飛び出した山ガール的脅迫にエルはたじたじだ。子供ならではの豊かな想像力で「じーーーっくり」食べられるシーンを想像してしまったのかもしれない。
「で、でもっ。早くむかえにいってあげないと…迷って、こまって…みんな…泣いてる、かも…」
「エルは優しいひと」
ユティはエルのほっぺを両手で包んだ。
「だからこそ、待ちましょう。いたずらに動いてエルが傷つけば、ルドガーは悲しむ。プリンセスを迎えにくるのはナイトの役目」
「……エルがコドモだからごまかそうとしてるでしょ」
「そんなわけ」
エルはユティの手をふりほどいて仁王立ちした。
「エルはオヒメサマきらいっ。だって、おとぎばなしのオヒメサマって、待ってるだけで自分からはなーん
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