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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十四話 赦しを請う者
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月頃からエーリッヒについて調べ出している。サイオキシン麻薬事件が発覚した直後だ。そしてその当時から最高機密扱いの情報が有る。

それ以後エーリッヒのデータは毎年更新されている。他にここまで執拗に調べられた人間はラインハルト・フォン・ローエングラム伯爵だけだった。伯のファイルもかなりの部分が最高機密に指定されている。閲覧可能者は司法省でも尚書、次官、他数名の局長にすぎない。

「他に私のファイルにアクセスしようとした人間は」
「いません。ファイルにアクセスすれば閲覧は出来なくてもアクセス履歴が残ります。任務以外でアクセスすれば周囲の不審を買うのです。情報関係の人間なら誰もが知っている事です」
俺の答えにエーリッヒが頷いた。

「ルーゲ伯のファイルは如何です」
「今のところは不審なアクセス履歴は有りません」
「狙いは私か……」
呟く様な口調だが不快感や嫌悪感は感じられない。普通は調べられていると分かれば嫌な顔をしそうなもんだが……。

「そのようだな。卿がこの件の責任者と知っているかどうかは分からんが明らかに狙いは卿だ」
二人が頷きあっている。興奮も無ければ感情の揺らぎもない。淡々と事実だけを積み重ねている。遣り辛いな。

「憲兵隊からは何か言ってきたかな」
「憲兵隊のボイムラー准将からは何も。特に異常はないそうです」
「……地球教に監視を気付かれた形跡は」

「今のところはそれらしい形跡は有りません。……用心しているのだと思いますが……」
ボイムラー准将は広域捜査局の依頼を受けてオーディンの地球教の支部を監視している。もう一週間以上になるが常に報告は異常無しだ。

少しの間沈黙が有った。エーリッヒが視線を伏せ意味に考えている……。視線を上げた。
「……試してみよう。今日にでもアルフレート・ヴェンデルに伝えて欲しい。私が地球の件で話を聞きたがっている。今、忙しいので六月十日に宇宙艦隊司令部で卿と共に会うことになったと」

焦れてきたな、自分を囮にするのはエーリッヒの癖だ。但しそれが良いのか悪いのかは分からない。
「その際、閣下が本件の最終責任者である事も伝えてしまって宜しいでしょうか」
俺の言葉にルーゲ伯が片眉を僅かに上げた。ようやく人間らしい反応をしたよ。

「構わない、その方がはっきりして良い。地球教に圧力をかける事にもなる」
確かにその通りだ。責任者がルーゲ伯というのとエーリッヒというのでは相手に与えるインパクトは全然違う。受ける圧力も当然違う。

「動きが出ると思うのかね」
「ええ、何らかの動きが出ると思います」
「まさかとは思うが、彼が暴発して卿を襲うのを待つと」
ルーゲ伯が僅かに眉を顰めた。この爺さんの感情は眉に出るらしい、大発見だな。

「そんな事はしません。彼らが接触した
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