凶宴のとき……中 (改訂)
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あの時、たった二人の喜びを探せたなら……
どれほど楽だろうか……この手が、彼女の涙を止めるだけに使われたのなら……
いや、それすらも建前に過ぎない。答えは単純、怖いのだ。幸せを手にし、いつか失われる瞬間が……恐ろしくてたまらないのだ。故に、あの日を境に切嗣は何も持たない機械になった。舞弥も自分を正常に稼働させる部品として扱い、衛宮切嗣は「人」であることを止めた。……彼女と出会うまでは。
「……切嗣」
寝言であろう、彼女の発した意図しない呟きが衛宮切嗣を大きく狂わせた。嘗て、「魔術師殺し」を衛宮切嗣に正常に破壊したように……
その瞬間、彼が何を想い、何に葛藤し、何を決意したかは解らない。ただ、衛宮切嗣の手は……
「シャルロット」
彼女の頭の上におかれた。
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夢を見た。思い出したくもない、嫌な夢を。
母さんが死に、僕がデュノアに引き取られる場面。
それが何回もリピートする夢。
はじめの内は、泣き叫ぶ事が出来た。それが繰り返す内に……泣くことすら出来なくなった。夢を見ているというより、見せられているという方が正しいだろう。
母さんが死ぬ、次の瞬間、もう見慣れてしまった場所に居た。
「母さん……!」
また、自分の居場所が失われる瞬間、耐えきれず母に抱きついた。それは冷たく……嫌がおうにも彼女の死を実感させられた。
「逝かないで……お願いだから」
しかし、その温もりは戻ることなく……母の体は薄らいでいった。
「い、嫌だ……」
どれほどしっかりつかんでも崩壊は覆らず、やがて
「あ……ああ」
いつもの場所に居た。
「もう嫌だ……」
涙が枯れきった後、嘆きの言葉が紡がれた。
「……助けてよ」
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―― 切嗣 ――
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突然、光が現れた。どこから溢れたかは解らないが……それは小さく、頼り無いながらも、優しい光だった。
不意に悟る。
――大丈夫だ……この光さえあれば、まだ歩ける――
リピートは止まない。現実も変わらない。そこまで、この光は強くない。けれど、彼女の道を照らすには十分すぎるほど明るく……柔らかかった。
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pm6.00
「う、うん……」
目が覚めた。
(カーニバル2日目か……)
何であんな夢を見てしまったのだろう。きっと、祭りの後の寂寥感のせいだ。
(これが、日本の祭り……切嗣の故郷の……)
そこではたと思い当たる。
「切嗣……」
まだ寝ているのかなと思い、少し顔を左に傾ける。
その時、ドサッという音がして頭から何かが落ちた。切嗣の手だ。
見ると、こちらを伺うように椅子に座って眠っていた。
(多分僕が
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