第三話 幼児期B
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だの子どものわがままで、仕事は辞められないだろう。だが、甘いよ母さん。俺がその程度看破できないと思ったか。事前情報は完璧。協力者の援護も要請済みの俺に死角はない。
「大丈夫だよ。母さんは魔導師ランクSの大魔導師。それに魔法工学の研究開発者としての功績もあり、しかもミッドの中央技術開発局の第3局長。さらにさらに、2児の母とは思えないぐらい美人だから、すぐに就職先もイケメンの男も見つけられそうだね! ……ぐすっ、えぐっ、うえぇぇえぇん!! ……って、同僚のお姉さんが悔しさで涙を流しながら語っていたよ」
「(人の息子になにを話しているのよ!?)」
同僚さんからもらった証言を本人さながらで伝えてみた。泣きマネ込みで。母さんが軽く現実逃避しながら、頭を抱えていた。
ちなみに母さんと同僚さんは友人同士で、仲もいい。というより、開発チームのみんないい人たちだ。世界のみんなのためになる技術を、研究することを心情に集まった人たち。俺たち兄妹はなんかマスコットのように可愛がられていた。そのおかげか、アリシアは大人相手にも物怖じしない明るい性格になった。局長として忙しい母さんの代わりに、俺たちの面倒をよく見てもらったっけな。
……次元航行エネルギー駆動炉の開発の話と、あの上層部の連中が現れる前までは。
とまぁそれは、今はいいだろう。とにかく、まだオレのバトルフェイズは終了していないぜ! 正真正銘のダイレクトアタック。出でよ、強靭! 無敵! 最強! の対母さん用の切り札よ!
「なぁ、アリシアも母さんがもっと元気に一緒にいて欲しいよなー?」
「うん!」
キッチンにひょっこりと現れた妹は、元気よく返事を返す。ナイススタンバイ。サムズアップしてエールを送ると、妹も母さんに見えないようにまかせて、とサムズアップ。いろいろ大丈夫なのだろうか、この兄妹。
「お母さん、私もっとお母さんと一緒にいたい。それにね……私、お母さんが心配なの」
「……アリシア」
娘の純粋な思いが母親に届く。少女の大きなルビー色の瞳が揺れ、小さな手が母のエプロンを遠慮がちに握る。その言葉に嘘はまったくない。そこにあるのは、ただ母親が心配で、自分の思いを精一杯に伝えようとする健気な少女と少年の姿だろう。
「(いいぞアリシア。そのちょんとエプロンをつかむ仕草ナイス! 次にそこで上目づかいで涙を目にためろ。そしてさりげなく、ダメ? と小首をかしげればなおよし)」
「(目に涙を浮かべるには、おばけこわいおばけこわいおばけこあい……ぐすっ)」
「うっ…」
内面を別にしたら。
ちなみに無理だったけど、いい線までいったことは明記しておく。
******
「もうちょっとだったのにな…」
「がっくし」
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