第四十五話 潰えた理想
[16/18]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
フォウも彼の声を聞いてくすりと笑った。それを知ってか知らずかケーンがリンダの部屋に入って来た。
「おろ!?」
だが彼は部屋の中を見て声をあげた。
「何でレッシィさん達がここに?」
「あたし達がいたら何か不都合なことでもあるのかい?ケーン」
「いや、そうじゃねえけど」
彼は嘘をつくのが下手である。それは明らかに不都合がある顔であった。
「ちょっとね。まあ何ていうか」
「わかってるさ。お邪魔虫達は消えろってことだろ」
「どうやら私もいても意味がないようだし」
「帰りますか。後はケーンさんにお任せします」
「お任せしますって」
フォウと麗のわざとらしい態度にかえって面食らってしまっていた。
「そんなこと言われてもなあ」
「あんたは三銃士なんだろ」
だがレッシィがそんな彼に対して言った。
「地球の小説読んだよ。中々面白いじゃない」
「あら、レッシィさんって読書家なんですね」
「麗、あんたが薦めたんじゃないか。暇潰しにって」
「そうでしたっけ」
「いいね、あれ。あの三人だけでなくダルタニャンもいてさ」
「気に入って頂けましたか」
「ああ。まだまだ続きがあるんだろ。読ませてくれよ」
「いいですけれど長いですよ」
「長くてもいいさ。早く続き読ませてよ」
「わかりました。それでは」
「頼むよ。何か病み付きになっちゃったよ、あれ」
デュマの小説はかなり長いが登場人物が個性的で生き生きとしており、かつ歴史とも合わさっており非常に読み応えがあるのである。なおこの三銃士は主人公の四人はおろかその脇役達の殆どが実在人物である。もっともデュマの脚色がかなり入っているのであるが。
「それでレッシィさん」
「おっと、いけない」
ケーンに言われて話を元に戻すことにした。
「それで三銃士ですけど」
「あれにはコンスタンスっていう恋人がいたね」
「はい」
「ダルタニャンも恋人を大事にしたんだ。あんたもそうしな」
「!?」
「少なくともミレディーとは違うんだからね。いいね」
「俺はミレディーみたいなのは嫌いですよ」
どうやらわかったようである。もう普段のケーンに戻っていた。
「けどリンダはコンスタンスじゃないですよ」
「じゃあ何なんだい?」
レッシィも乗ってきた。ニヤリと笑っている。
「リンダはリンダですよ。コンスタンスじゃないですよ」
「そうかい」
それを聞いて笑みをさらに深くさせた。
「安心したよ。じゃあ任せたよ」
「はい」
こうして三人は席を立った。後にはケーンとリンダが部屋に残った。二人は向かい合って立っていた。
「ケーン」
「なあリンダ」
深刻そうな顔になるリンダに対して言った。
「何かしら」
「ちょっとナデシコのプールに行かねえか?戦闘は数日後だって話だし」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ