第四十四話 第三の敵
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ですか」
「剣聖シュメル殿の邸宅近辺。一体ここに何があるというのだ」
ジノはそう言って首を傾げさせた。
「戦略的には何の重要性もない筈だが。国境にあるとはいえ」
「それはそうですが」
「そういえばバレンシア少佐はシュメル殿の弟子であられましたな」
「知っているか」
「はい。不易久遠流免許皆伝だと御聞きしておりますので」
「確かにな。私はかってシュメル殿に剣を教わった」
「やはり」
「ああ見えても繊細で心優しい方でな。私は剣以外にも多くのものを教わった」
「人格者としても有名な方ですからね」
「だからこそだ。何故そのような方の場所に兵を向けるのだ」
「それがわからないので我々も困っているのです」
彼等はそう言って首を傾げさせた。
「何故でしょうか」
「シュメル殿がラングランと通じる可能性があるというのなら愚かなことだ」
ジノはその切れ長の目に嫌悪感を露わにさせた。
「そのような方ではない。かといって軍に協力もされないだろうが」
「それでではないでしょうか」
「幽閉するつもりだというのか」
「こうした状況ではよくあることです。どう思われるでしょうか」
「ふむ」
ジノはそれを受けて再び考え込んだ。
「だとすれば愚かなことだ、実にな」
「そうなのですか」
「元々この戦いに大義があるとは思えない。それでそうした行動をとるとはな」
「幽閉、がですか」
「それにシュメル殿は一市民に過ぎない。市民に害を為してどうするというのだ」
「はい」
「我々が戦うのはあくまでラングラン軍に対してのみ。それは諸君等もわきまえておくようにな」
「はい」
「それはちょっと甘い考えだと思うぜ」
ここでギンシャスプラスがまた一機やって来た。そこにはリーゼントにした白人の男がいた。かなりワイルドな雰囲気を漂わせた男であった。
「バレンシア少佐、だからあんたは甘いんだよ」
「トーマス=プラット少佐か」
「おうよ、暫く振りだな」
彼は煙草をくわえながらジノに返礼した。
「元気そうで何よりだ」
「まさか貴官までここに来ているとはな」
「あの爺さんに命令されれば嫌とは言えねえさ」
彼はシニカルに笑いながらそう答えた。
「それが軍人ってやつだろ。ビジネスには真面目でなくちゃな」
「それが貴官の考えか」
「気がついたらここにいてそれで少佐にまでしてくれたんだ。働かなきゃ名が廃るってもんだぜ」
「それはそうだが」
「まああんたはそっちを頼むぜ。俺はちょっと仕事があるんでな」
「仕事を」
「ああ。それじゃあな」
「うむ」
別れを告げると彼はジノ達から離れた。そして遠くへ消えてしまった。
「プラット少佐の任務とは何でしょうか」
「余計な詮索は無用だ」
ジノはそう言ってまた部下達を窘めた。
「
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