第四十三話 月の異変
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して部屋の前でまずはノックをした。
「入れ」
一言そう声がした。それに従い入ると質素な部屋の中に彼がいた。ギガノスの総司令官であり国家元首でもあるギルトールである。
「よく来てくれたな」
「閣下の御呼びとあらば」
マイヨはギガノスの敬礼をしながらそれに応えた。
「何処にいようとも」
「うむ」
ギルトールはそれを聞き頼もしそうに頷いた。
「話があってな」
「若手将校達のことでしょうか」
「やはりわかっていたか」
ギルトールはそれを聞き席を立った。そして窓の外を見た。そこには月の荒涼たる大地と銀河、そして青い地球が映っていた。
「閣下、御言葉ですが」
「言いたいことはわかっておる」
ギルトールは重い声でそう言った。
「それでは」
「だがそれはできぬ」
「何故ですか、彼等の言っていることはギガノスを真剣に思って・・・・・・」
「マイヨ」
ギルトールは彼に顔を向けてきた。
「はい」
「わしも彼等の気持ちはわからぬでもない。いや!」
自分の言葉を否定した。
「わかり過ぎている程わかる。だがな」
「それでも駄目なのでしょうか」
マイヨは問うた。
「腐敗した上層部の刷新は」
「それは確かに重要だ」
ギルトールはそれも認めた。
「我々は地球連邦やティターンズなどとは違う。理想によってのみ立っている」
「ならば」
「この戦いには勝たなければならないな」
「はい」
ギルトールはここでマイヨの機先を制するようにして言った。
「だがその後はどうなるか」
「その後ですか」
「問題は勝利の後だ。戦いの後の地球、そして選ばれた人類の当地と管理には老練な将軍達の力が必要なのだ」
「では彼等の言う通りに鎮圧を!?」
マイヨの心に戦慄が走った。
「それも愚だ」
しかしギルトールはそれもよしとはしなかった。
「勝利するには、そして将来のギガノスの為に若き者達も必要だ」
彼は全てわかっていた。だからこそ悩んでいたのだ。
「武力による解決はならん。彼等のどちらも失ってはギガノスは崩壊する」
「・・・・・・・・・」
「将軍達はわしが止める。何としてもな」
「はい」
「マイヨ、御前は若い者達を頼む。さもなければギガノスは破滅してしまうだろう」
「わかりました」
やはりギルトールは優れた指導者であった。全てがわかっていた。そして彼はギルトールであった。ギレン=ザビでもジャミトフ=ハイマンでもなかったのだ。
彼は再び窓の外に目をやった。そして地球を見る。
「美しいな」
「はい」
マイヨもそれに同意した。
「美しい星だ、地球は。だからこそ正しい者によってこそ治められなければならん」
「その通りです」
「だが・・・・・・あまりにも美し過ぎる」
彼は一言漏らした。
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