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人狼と雷狼竜
ユクモ村にて自己紹介と……
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それでも、あの娘達の心を完全に癒すことなど出来なかったでしょう」
 ヴォルフは団子の一個目を食べながら聞く。質素な甘さの有る独特の甘味だと素直に思ったが、村長の話が正直言って重かった。
「そこへ数年前に届いた情報……風の知らせとでも言うのでしょうか……ギルドでこの村出身のハンターが史上最年少で上級ハンターの仲間入りを果たしたとの吉報が入りましてね」
 そう言って村長はヴォルフをいつもの糸目ではなく、開いた……夜空のような澄んだ目で見た。
「貴方のことですよヴォルフ。その時のあの二人……夏空と神無の喜びようは見ているこっちが嬉しくなりましたわ。彼女達の喜びは貴方が上級ハンターになったからではなく、行方知れずとなっていた貴方の無事を知る事が出来た事に対する喜びですわ」
 ヴォルフは急に理解した。あの時の彼女達が見せた喜びの意味……そして、自分が彼女達を覚えていなかった事に対する落胆の意味を。
 生き残ることに必死すぎて前しか見ていなかった自分に対して、あの二人は両親を失いつつも自分の身を案じてくれていたのだ。
「貴方が旅立った当時、まだ生まれていなかった小冬は貴方の事を聞きハンターへの道を志しました。あの娘は対抗意識がお強いですからね。同じこの村出身の貴方に対抗して見たかったのでしょう。今まで一緒に生きてきた姉二人もまた、同じくハンターを志しました」
 村長の言葉にヴォルフはお茶を飲みながら聞き続ける。猫舌の彼には少し熱かったが、飲めないほどではなかった。
「それで、俺にあの姉妹をどうして欲しいんだ? 鍛えろと?」
「あの時のように接して下されば幸いですわ」
 村長は笑顔で答えた。ヴォルフは見かけに反して考えや人の気持ちが理解しきれていない部分が多分にある事を既に見抜いていた。これからあの三人やこの村の住人と接する事で、それらを身に付ければ良いと踏んでいた。
「覚えてもいない事をどうしろと?」
「家族として、少なくとも友人として接して頂ければ……」
 そんな簡単に出来る物かとヴォルフは心の中で思ったが、口にはしない。生来口下手な自分には会話は不得手だ。余計な籔は突かないに限る。そもそも家族なんて物は知らない。
「善処するとしよう」
「はい。宜しくお願い致しますわ」
 村長はヴォルフの言葉にニッコリと笑った。
「そうそう。貴方の寝床の件はもう暫くお待ちくださいませ。手違いで手配が遅れてしまいまして……」
「最悪野宿で構わんよ。いつもの事だ」
 ヴォルフはそう言うと最後の団子を食べ始めた。



「改めて自己紹介するね。私は四季上(しきがみ)神無(かんな)。宜しくねヴォル君!」
 服を普段着らしい黄色の着物に着替えた、艶のある黒髪を腰まで伸ばした少女が、花が咲いたような満面の笑顔でヴォルフに自己紹介する。
 つぶら
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