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人狼と雷狼竜
ユクモ村にて自己紹介と……
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った果実のように潰れてしまうだろう。
「……氷柱(つらら)の一刺は大地を穿つ」
 ヴォルフが厳かに呟くと共に、迫る即死の爪は躱された。彼は下がっても側面に逸れてすらいない。縦に、垂直に跳んで回避したのだ。その結果、爪は虚しく空を切る。
 その跳躍は一息に直立したアオアシラよりも高く軽く跳んでいた。
 鞘鳴りと共に抜き放たれる白刃。刀身を下にして振り被り――――――降下と共にアオアシラの頭に突き立てられた。
 鈍い、湿った音が奇妙にも響き渡り、一瞬送れてアオアシラが崩れ落ちる。その時には既に、ヴォルフは事切れた牙獣の体を足場に跳び着地していた。
 頭に突き立てられた刃は頭蓋を貫き、顎の下にまで達していた。アオアシラは何が起こったのか分かってすらいなかっただろう。
「待たせたな」
 ヴォルフが刀を振るって血を払い鞘に収めながら言った。


 どんな牙獣かと思ったが、力だけの木偶のような奴だったな。だが、これでも非戦闘員や人里には充分に脅威とはいえるな。始末したのは正解だったか。
 さて、二刀使いの女、小冬……だったか? 怪我の手当てをするか。そう思った所で視界に入る見覚えのある二人と一匹が増えていた。
「速かったな」
 あの二人、どうやら怪我はしていなかったようだな。無事で何よりだ。
「傷を見せろ。それとも連れ二人に任せるか?」
 三人と一匹に近付きながら尋ねた。
「……アンタ、誰?」
 小冬に問われた。……小さいな。幾つだ?
「ヴォルフ・ストラディスタ。ユクモ村村長の召喚に応じ馳せ参じた。ギルドの規定によって俺はユクモからモンスターの脅威を排除する任を与えられている」
 要救助者を三人。無事に確保した事もあって、改めて自己紹介をする。あの細目村長は『まぁ! 畏まってしまいまして!?』等と大袈裟に、且つ斜め上の反応をしてくれたが。
「あらあら! ヴォルちゃんってばナイト様みたいです! カッコイイです! ポーズとって言ってくれませんか? 『この剣に掛けて誓います』って!」
 ……見事に裏切られた。この女性もあの村長と同類か。思考がずれているのか、何と表せば良いのやら……。
「お姉ちゃん! 困らせちゃダメだよぅ! ゴメンねヴォル君! お姉ちゃんも悪気は無いんだよ? ただね、久しぶりに会えたから嬉しいの。私もね」
 久しぶり? 俺は彼女達に会った事があるのか?
「何処かで会った事があるか?」
 俺の言葉に、二人は一瞬驚いたような顔をし、すぐに凄く悲しそうな顔をした。一方で小さいのは俺を睨み続けている。早速拙い事になったか。
「覚えて……いないの?」
「私達のこと忘れちゃったんですか!?」
「……」
 呆然と力の無い言葉。ショックで泣きそうな雰囲気の言葉。刺々しい無言の視線。……針の筵(むしろ)とはこういうもの
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