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『彼』とあたしとあなたと

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 どくんと日紅の心臓が波打った。それは決して、犀のその言葉を聞いたからではない。犀の目。その瞳を見たから。その瞳の奥にあるものを、日紅は確かに見た。そして自分の瞼の奥も。



 言葉にできない、その感情を。



「お前のことが、ずっと、ずっと好きだった。他の何にも代え難いくらいに好きなんだ、日紅。俺と月夜、どっちが好き?比べるのなら、どっちが上?俺はもう耐えられない。こんなに、お前を好きなのに。月夜と同じなんて冗談じゃない。俺はおまえの中に、俺だけがいてほしいと思う。ちゃんと俺を見て、日紅。自分のことからも、現実からも、目を逸らすなよ…」
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