第12話 2つの世界
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言われ、純吾はギュッとニット帽をかぶりなおしながら、ぶっきらぼうにそう呟いた。
口調はそんなだが、ニット帽からのぞく顔は少し赤い。そんな表情を見て、士郎たちは恭也の言う信頼のおける人物だという事を信じた。
「それに…、なのはジュンゴの友達。友達助ける事が出来て、ジュンゴも嬉しい」
相変わらず、ニット帽で顔を隠したままだが、フッと少し口元を持ちあげる事で、ふにゃりと雰囲気を和らげてそう続ける。
どうやら彼にとって友達を助けるというのは当たり前の行動なようで、そう言った姿に気負った様子は全く感じられない。純吾のそんな返答に、士郎は思わず笑みがこぼれる。
「…は、はははっ。本当に君は聞いた通り、まっすぐで素直な心根をしている」
「ふふっ、そうでしょう? お店の方も、一生懸命手伝ってくれるのよ」
桃子も立ち直ったようで、くすくすと笑い始める。
死に顔動画、そして悪魔の存在を見せつけられて、士郎たちは恭也の説明を信じ始めていた。それはつまり、純吾が体験したと言う事も本当だと信じることになる。
世界の崩壊、それに悪魔の出現。それらは彼の過ごした場所を、街をそして知っている人たちを次々と破壊していった事だろう。
さらに暴徒に殺されかけたという経験。同じ人間の最も薄汚れた部分をまざまざと見せつけられながら、なお彼の目は濁っていない。むしろその全てを自身の生きるための糧として呑み込んで、更に前へ進むための原動力としている。
その事が高町夫妻にとってまるで奇跡のように珍しく、そして尊いもののに思えてくるのだ。
目の前で微笑む高町夫妻に純吾は、自分の答えがどうして笑われたのか分からないように、コテン、と首をかしげる。
そんな彼を見てさらに温かい雰囲気が広がり、動画を見た後の悲壮感が段々と薄れていっていた。
「そーよ、ジュンゴってとってもまっすぐで良い子なんだから。さっすが私のご主人様よね〜」
リリーが場の雰囲気がなごんだ事につられて、きょとんとしたままの純吾に抱きつく。知り合って間もない人たちの前で抱きつかれたのは恥ずかしいのか、驚きつつも純吾はリリーを離そうとするが
「いーじゃない、分からず屋などこかのおじさんに私達の仲を見せつけてやるのよ♪」
そう言って頬擦りまで始めるリリーを押し返す事ができないでいた。
「おいおいリリーさん、純吾君はまだ子供だろう? 店でも思ってたがそんなスキンシップは恥ずかしくて当たり前だよ」
士郎が自分への当てつけである事に気づいて苦笑し、それでも純吾に助け船を出す。
「何言ってるのよ、ジュンゴは19歳 だったのよ?」
しかしその予想だにしない返答にビシィ! と場が凍りついた。信じられないものでも見るかのような視線が純吾
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