第12話 2つの世界
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それを見て、士郎は顔を青くし、同様に白くなるほど、卓上に置いた拳を握りしめていた。 桃子と美由希はお互いに肩を寄せ、俯いている。その肩は時折震え、嗚咽のようなものも聞こえる。
動画の中だけとはいえ、娘が、妹が苦しんでいる様を見せられ平静でいられるはずが無い。それを見ているしかできなかった事に、皆一様に苦しみ、どう感情を処理したらよいか分からなくなっていたのだ。
「それが…、前に言っていた死に顔動画なんだな」
ただそれでも、他の家族より平静を保つ事ができた恭也が聞く。事前に動画のについて聞き、見る際の覚悟を決めていた事も大きかった。
純吾がその問いに対して恭也に目線を向け、コクンと頷いた。
「す、すまない…。その“死に顔動画”っていうのは、一体何なんだ?」
恭也に続いて立ち直った士郎が、少し青い顔のままそう尋ねた。
「キョーヤ、リリー、いい?」
純吾がこの事を知っている2人に尋ねる。彼の力には、“夜の一族”の事にもある程度関わってくるからだ。
「もっちろん、私はジュンゴに従うだけよ」
「あぁ、君の事情を話さない限り先には進めない。けど忍たちの事もある、俺から説明をさせてもらえないか?」
リリーは一つ頷き、恭也は純吾の問いかけの意味を理解してそう確認した。純吾は頷き、その申し出に了承する。
「ありがとう。……それじゃあ父さんたち、落ち着いて聞いてほしい――」
恭也は話し始める。
純吾がこの世界の住人ではなく、“違う世界”から来たということ。ここと似ているそこはある日突然巨大地震による崩壊に見舞われ、同時に悪魔が跋扈する地獄の様な世界になったこと。
そんな時、【悪魔召喚アプリ】を死に顔サイト【ニカイア】から得て、生き残る手段を得たこと。
「じゃあ、あの動画も」
「そう。仕組みは全く分からないらしいが、あの動画はその【ニカイア】というサイトから、特定の人物の“起こりうる死の未来”を知らせてくるらしいんだ。
……説明を続けるよ」
そうして【悪魔召喚アプリ】を得て3日目の朝、暴徒と化した市民の手によって純吾が瀕死の重傷を負ったと説明すると、今度は桃子が口を手で覆いながらショックを隠しきれない様子で呟く。
「そんな…、そんな酷い事って」
「ゴハン食べれなくて、みんな怒りんぼだった。それにジュンゴのいた所だけ、ゴハンがたくさんあったから……」
その言葉に桃子ははっと目を見張ると、ばつが悪そうに俯いた。今恭也が話している事は、彼が本当に体験したという事なのだ。たった3日とはいえどれだけの絶望を彼が目にしてきたか、彼女では想像することもできなかった。
「……これで最後になる。その後、どういう訳かこの世界にやってきた純吾を助けた
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