第12話 2つの世界
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、リリーが「お久しぶりですっ、士郎さん♪」と(一見)無垢な笑顔で会釈をする。
リリーの笑みに士郎があの時の事を思い出したのか、引きつった笑いをする。あの後の妻からの説教は、それは深く士郎の心にくさびを打ち込んでいたのだ。
と、いきなり桃子がいい笑顔を夫の耳に近づけぼそっと、「いつの間に名前で呼び合う仲になったのかしら、士郎さん」と囁くように告げる。そして純吾達から見えない所で士郎の体をつねった。
突然引きつった顔をさらに引きつらせる士郎と笑顔の桃子を見て、純吾は何が起こっているのか分からないと首を少し傾げ、リリーは何が起こっているが分かっているがニコニコと微笑み続ける。
彼女は自分と純吾の中を邪魔しようとするものを決して許しはしない。今回の挨拶も、知ったばかりの士郎の名前を使っての確信犯的な嫌がらせだ。そしてそんなリリーを見つつ、恭也と美由希は同じことを考えた。
――ああ、彼女だけは敵に回しては絶対に駄目だ、と
「んっ、んん! それで純吾君。なのはやすずかちゃん達に聞かせたくなかった話とは、何なんだい?」
さっそく荒れ模様な場の雰囲気を危惧してか、士郎が慌てて咳をして話をもとに戻そうとした。
そして目を細め、真剣な様子で切り出す。他の面々は彼に任せ、純吾と士郎の間を何度も視線を往復させている。
「ん…。これ」
そういって純吾が士郎の問に答え取り出したのは、彼の携帯。
「メールが教えてくれたから、止めた」
画面を開き、メールに添付されていた動画を再生する。
そこに映っていたのは、先程まで純吾達が相手にしていた異形――ジュエルシードモンスター。
だが画面の中には純吾達の姿は見えず、なのはとユーノしかいない。そう、再生されている動画は、本来起こりうるはずだった高町なのはの死を映した動画――死に顔動画【ニカイア】である。
それが映し出すなのはたちは、純吾達が駆け付ける前同様、モンスターから逃げ惑っていた。
何度もモンスターに捕まりそうになり、純吾達と合流した場所、広い一本道に差し掛かった時、なのはは電柱の陰に座りこんでしまった。
その絶望し、電柱の下に座りこむなのはの顔を見た時、士郎達がうめいた。
場面が変わったのか、いきなりモンスターが画面に現れる。
いきなりのモンスターの登場に、逃げる隙もなく体の中にユーノごと取り込まれる。モンスターの中は液体のようになっているのか、なのはとユーノの口から気泡が漏れる。空気が少なくなっていく中、必死に外に出ようともがくが、モンスターはその都度体の形を変え、その牢獄から外に出させようとしない。
そうして、段々と動きが緩慢になっていき、まずユーノが動かなくなった。
続いてなのはの動きも段々と弱くなっていき……
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