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蒼き夢の果てに
第3章 白き浮遊島(うきしま)
第22話 ギトーの災難
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しますから。

「いや、今日の授業は以後、すべて中止と決まったのです」

 教壇の中心……つまり、現在、ギトー先生と俺が立っている付近に向かって歩み寄りながら、そう告げて来るコルベール先生。
 しかし、少し急ぎ足で移動しようとし過ぎたのでしょうか。それとも笑いの神が彼こそ、真の最強のリアクション芸人で有ると微笑み掛けたのか。何もないはずの教壇への道のりで、何故か躓いて仕舞うコルベール先生。

「おわっと」

 両手で危うくバランスを取り、何とか、歌舞伎役者が見栄を切るような仕草をして、無様に転んでしまう事は防いだコルベール先生では有ったのですが、再び真っ直ぐに立って生徒達の方を向いた時には、頭の方が、非常に残念な状態へと移行して仕舞っていました。

「滑りやすい」

 自らの方に飛んで来たふさふさの金髪かつらを一度見つめ、そして(おもむろ)に、普段通りの短く、簡潔な言葉で、その非常に残念な状態となって仕舞ったコルベール先生の頭を表現する俺の蒼き御主人様。

 確かにそれは事実なのですが、武士の情けと言う言葉は、この世界には無いのでしょうか。

 再び、爆笑に包まれる教室内。矢張り、真に笑いの神に愛されているのは、ギトー先生では無しに、コルベール先生の方だったと言う事ですか。

「黙りなさい! ええい、黙りなさい、この悪童どもが!」

 コルベール先生が顔……何処から何処までが顔の範疇で、何処からが頭なのか、イマイチ判り辛い御方なのですが、少なくとも、今は顔から頭のてっぺんまで、全て真っ赤にしたゆで蛸状態で、大きな声で怒鳴り始める。

 そして、

「大口を開けて下品に笑うとは、まったく貴族にあるまじき行いです!」

 最早、ゆで蛸なのか、コルベール先生なのか判らない状態で、ブチ切れまくっている先生。しかし、どう考えても、今のセンセイのキレ具合の方が、貴族に有るまじき行いだと俺は思うのですが。

 それにしても……。
 本当に、コルベール先生は、一体何をしに来たのでしょうかね。


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