第十四話 覇者と商人
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受けた時、何が起きたのか分かりませんでしたよ」
キャゼルヌさんが頷いている。
「何を考えているのかな。要塞を取っても通航権と引き換えにローエングラム公に渡してしまう。六千億帝国マルクの身代金も同盟との交易の権利とヴァンフリート星系の割譲で放棄……。俺の考えでは連中は金よりも交易を望んだように見えるんだが……。どう思う、ヤン」
ヤン提督が頭を掻いた。ちょっと困っているのかな。
「シトレ元帥から聞いたのですが彼らは余り身代金には拘らなかったそうです。先輩の言う通り、交易の方を望んだのでしょう」
「そうか……」
「最初の交渉で同盟政府に金が無いのは分かっている、二億帝国マルクを現金でくれるのなら残りは金じゃなくても良いと言ったそうですよ」
「妙な話だな」
キャゼルヌさんの言う通りだ。六千億帝国マルクを請求しておいて現金は二億帝国マルクで良いなんて何を考えているのだろう。しかも最初の交渉でそんな事を言うなんて……。なんだかお金なんかいらない、他の物を寄こせって言ってるみたいだ。
「そのうえで同盟領内での交易権と交易の継続性を保障してくれと言ったとか……。ヴァンフリートを割譲して彼らに開発させるというのはそこから出たんですがどうも向こうに誘導された様な感じです。シトレ元帥も首を傾げていましたよ、妙な連中だ、本当に海賊なのかって。商人だと考えると納得がいきます」
「……」
「何となくウイグル人を想像しますよ」
「ウイグル人?」
僕とキャゼルヌさんが問いかけるとヤン提督が“ええ”と頷いた。
「人類が地球を唯一の住み家としていたころですが、チンギス・ハーンとその子孫がモンゴル帝国を築いた時代が有りました。最盛期には地上の約四分の一を支配下に置いたんですが彼らの勃興には強力な国家による交易活動の保護を期待するウイグル人の協力が有ったんです」
「……」
「彼らは交易活動で得た情報、財力をモンゴルに提供し官僚、軍人としても協力した。それに対してモンゴル帝国は関税を撤廃して商業を振興する事で応えたんです。その結果交易が隆盛し、モンゴルに征服されなかった国々までもが陸路、海路を通じて彼らの交易のネットワークに取り込まれました」
キャゼルヌさんがヤン提督の言葉に頷いている。
「確かにそんな感じだな、フェザーンはあくまで帝国と同盟を分離してその中間で利益を得ようとしているが黒姫は両方をくっ付ける事で利益を得ようとしているように見える。お前さんの言う通り、ウイグル人だ」
「彼らがローエングラム公に味方したのも貴族連合では帝国内は活性化しないと考えたからでしょう。実際にローエングラム公は政権を取ると同時に改革を始めている」
「彼らにとっては商売をし易い環境か……」
「ええ」
少しの間沈黙が有った。ヤン提督もキャゼ
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