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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第十四話 覇者と商人
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りげな笑みを浮かべた。

「黒姫一家ですか。交易のためにかなりエル・ファシルに来ていると聞きますが……」
「そうなんだ、エル・ファシルにとって連中は大事なお客様だ。鉱物資源を売ってくれるし生産財を大量に買って行く。連中、ヴァンフリート4=2の基地を修復して使うらしい。そのための資材も大量に買っていくよ。エル・ファシルはちょっとしたバブルだ」

「あの、皆怖くないんですか、海賊なんですよね。気に入らなければ暴力を振るうとか……」
僕が問いかけるとキャゼルヌさんが苦笑を浮かべた。
「俺も最初はそう思った。しかしどうも違うようだな」
「違う?」
ヤン提督も不思議そうな顔をしている。違うって何だろう。キャゼルヌさんがヤン提督のグラスにワインを注いだ。

「連中に海賊だろうって聞くと海賊だって答える。だけど犯罪者じゃないって答えるんだ」
「?」
「海賊と言っても色々居るらしいんだな。本当の海賊も居れば自警団みたいな奴もだ。帝国ではみんなまとめて海賊なのさ」
「自警団……」
ヤン提督が呟いた、そして一口ワインを飲む。

「黒姫一家は帝国辺境領域を縄張りとした自警団で商人でもあるらしい。俺も連中に直接会ったんだがごく普通なんだよ、特に変わったところは無い。俺がイゼルローン要塞に居た事を話すと済まなさそうな顔をされた。妙な気分だったな」
そう言うとキャゼルヌさんがまた苦笑を浮かべた。

「傭兵じゃないんですか」
「違うようだな、連中、戦闘には直接参加はしていないらしい」
変なの、黒姫一家って二年連続でローエングラム公に武勲第一位って褒められたんだけど戦闘には参加していない? ヤン提督もキャゼルヌさんも不得要領な顔をしている。

「大体武装艦は千五百隻程度しか所持していないらしいんだ。戦闘では大した活躍は出来ないんじゃないのかな。アムリッツアでは輸送船の拿捕だったし、内乱では補給の支援をしたと聞いている」
「なるほど……。しかしイゼルローン要塞は攻略しましたが」
ヤン提督の言葉にキャゼルヌさんが頷いた。

「驚いていたな」
「驚いてた?」
「ああ、俺が会った奴は知らなかったらしい。黒姫一家の中でも極秘作戦だったようだ。大体黒姫自身が作戦に参加していない」
「ですが作戦は黒姫が立てたと聞いています」
「そうなんだ」
少しの間沈黙が有った。二人とも視線を合わせたり逸らしたりしている。

「まぐれだと思うか?」
「……いや、それは有りませんね。あの作戦はあのタイミングでしか実行できません。駐留艦隊がイゼルローン要塞から遠く離れている、ローエングラム公も内戦で身動きが取れない。つまり誰も敵が攻めてくるとは考えていなかった。そして貴族連合が敗北して亡命者が出てもおかしくは無い状況……、一瞬の隙を突かれました。報せを
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