第十四話 覇者と商人
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ばれても良かった。実際途中まではそう呼ばれていたけどイゼルローン要塞の陥落が全てを台無しにしてしまった……。
アルテミスの首飾りの破壊、第十一艦隊の殲滅。イゼルローン要塞を失った同盟にとってはどちらも致命的な損失だと受け取られた。そして反乱を起こしたのが副官グリーンヒル大尉の父、グリーンヒル大将であることまでがマイナスに取られた。
ヤン提督が第十三艦隊の司令官の職に留まれたのはドーソン大将がイゼルローン要塞を空にして内乱を鎮圧せよと命令した事、そしてビュコック提督の命令書のお蔭だった。ヤン提督はあくまで命令に従って行動した、イゼルローン要塞陥落に直接の責任は無い、そう判断された。
“ヤン・ウェンリーの軍事的才能は同盟を丸裸にした” 多くの人間がヤン提督をそう批判する。批判だけじゃない、若くして大将にまで昇進したヤン提督に対するやっかみも入っているだろう、ザマ―ミロ、そんな感情も有るのかもしれない。しかしヤン提督は酷く参っている。自分のやった事が全て裏目に出た、民主共和政を反乱から守ったけど帝国からは守れないのではないかと悩んで、いや絶望している……。
その絶望は提督だけの物じゃない、同盟市民全てが共有する物だ。最近のマスコミは“同盟崩壊”という言葉を良く使う。そして帝国の改革を話題にする。多分自分達に密接に関係する事になる、そう考えているからだろう。同盟市民の関心も高い。
沈黙が落ちた、今日ヤン提督は軍服を着ていない、私服姿だ。軍服を着れば自分がヤン・ウェンリーだと周囲に知られてしまう。そうなれば必ず自分を非難する人間が出る。キャゼルヌ先輩にはこれ以上は無い辛い仕打ちになるだろう……。家を出る前に僕に言った言葉だった。そしてこう続けた、私は軍人らしく見えないから助かるよ……。泣きたくなった。
三月兎亭に着いた。ホッとする思いでタクシーを降り三月兎亭に入った。有難い事に室内の照明は薄暗い、これならヤン提督の事は分からないだろう。老ウェイターが注文を取りに来た。皆で肉料理をメインのコースを頼む。飲み物は七百六十年産の赤ワインと一杯のジンジャーエール。
キャゼルヌさんが新しい職場の事を話してくれた。今はエル・ファシルに有る軍需物資を取り扱う企業に勤めている。退役後、キャゼルヌさんの就職は早い時期に決まった。士官候補生時代に書いた組織工学に関する論文が評価されたみたいだ。ヤン提督はキャゼルヌさんがハイネセンを離れたのは二人の娘のためではないかと言っていた。心無い人達がキャゼルヌさんの家族にまで非難を浴びせたらしい。情けない……。
食事が進む中、ヤン提督とキャゼルヌさんが話し始めた。
「先輩、エル・ファシルは如何ですか」
「活気が有るな、ハイネセンよりもずっと活気が有る。理由は分かるだろう」
キャゼルヌさんが意味あ
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