双葉時代・発足編<前編>
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正直に述べると、うんうん唸っていた猿飛殿が口から唾を飛ばしながら、私に掴み掛かって来た。
「ちょ、お前冗談でもそう言う事は言うな!! ただでさえうちの女房はお前のファンなんだから!」
離婚されたらどうしてくれる!!
切実な願いを込めたその一言に、私も奥方殿も腹を抱えて笑い転げたのであった。
「成る程ね。依頼を受けて、それを能力で振り分ける。それだけなら従来のシステムと変わらないが、それを一族単位で行えば、確かに画期的と言えるな」
「でしょう? 策敵行為や内情調査なら油女、尋問には山中、敵の捕縛や生け捕りに関しては奈良の一族とか。それだけじゃなくて、様々な一族同士で小隊を組んで、それぞれの足りない所を補ったりとか! どう?」
「……確かに。それぞれの得意不得意を補えば、それまで一芸に傾きがちだった忍一族の問題点もカバー出来るな」
出されたお茶を啜りながら首を傾げてみせると、難しい表情を浮かべながらも一理あると猿飛殿は頷いてくれた。
「だが……。一筋縄ではいかないだろうな」
「まあ、そうだね」
それまでの一族重視の考え方から一変して、一度は戦場で戦った事のある相手に背中を預けろと言われても誰もが戸惑うだろう。
そこが最大のネックである。
二人して頭を抱えていれば、廊下の向こうから誰かが走ってくる音が聞こえた。
「柱間様〜! 来てたんだ!!」
「やっほう、ヒルゼン君。元気だったか?」
「うん!」
猿飛殿の一人息子である猿飛ヒルゼン君。
将来が楽しみな忍びの卵である。
「おれね、この間クナイが的の中心に当たる様になったんだよ!!」
「そうか! 凄いじゃないか」
やや乱暴に頭を撫でてやると、ヒルゼン君は照れくさそうに笑った。
昔はよく扉間も浮かべていた表情だが、最近ではあまりしないので、素直な少年の言動には心癒されるものがある。
「なあなあ! またおれの手裏剣術見てよ!」
「ちょ……! ヒルゼン、父さんの事は誘ってくれないのに、なんで柱間を誘うんだ!?」
涙目になった猿飛殿。
奥方殿が向こうで笑っている声がここまで聞こえてくる。
「だって。父ちゃん、教えるの下手なんだもん」
「んな……っ!」
息子の正直な一言に、衝撃を受ける猿飛殿。
流石に気の毒になったので、白い目を向けているヒルゼン君に対して猿飛殿を擁護する事にした。
「あのね、ヒルゼン君。こうみえても君のお父さんは凄い忍びなんだよ? オレが新米だった頃、何度か教えてもらったし」
「えー? ほんとー?」
ヒルゼン君に一生懸命猿飛殿の凄さについて話している最中に、ふと思いついた。
そうだ、この方法なら頭の固い連中も一気に納得してくれるんじゃないだろ
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