萌芽時代・発覚編<後編>
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千手の忍びとして、次期頭領として任務を受け、それを達成する毎日。
木遁を開発し、文字通り生死の境を行き来する日々を送っていた私の元に父上から集落に帰ってくる様にとのお達しがあった。
はて、何かあったのだろうかと首を傾げながら、私は久方ぶりに帰郷した。
「お帰りなさいませ、姉者!」
「ただいまだ、弟よ。暫く見ないうちに随分と背が高くなったな」
数週間振りに顔を合わせた弟は随分と大きくなっていて、ちょっと驚いた。
子供は少し目を離しただけで随分と変わるもんだよ、とこの間任務を一緒にこなした一族のご老人が言っていたが、どうも比喩でもなんでもなく本当の事らしい。
……かく言う自分もまだ子供だけどね。
「姉者、これよりおれの命名の儀が始まりまする。どうか姉者もご列席いただきとうございます」
「なら支度をしてくる。すぐに向かうから待ってろ」
「はい!」
もうそんな時期なのか、月日が経つのは早い早い……。
そんな事を思いつつ、一張羅を箪笥の中から引っぱり出して、弟や一族のお偉方の集まる儀式用の部屋へと向かったのだが――はて何かを忘れている様な?
「――これよりお主の名は千手扉間。長子である柱間を支え、一族を守る立派な忍びになる様に」
「はい、父上!」
忘れてたぁぁああ! まさかの確定フラグかよ!
もうダメだ。千手、チャクラ、六道仙人、千手柱間と続いて木遁に今度は「扉間」だ。
もう間違いない……気絶しなかった自分をどうか誉めて欲しい。
最後の望みは敢えなく絶たれ、これで自分が名実共に「千手柱間」であると認めざるを得なくなった。
「柱間よ、どうした。涙を流したりして」
「いえ。何でも有りません、父上」
扉間が大きくなったのが嬉しくて思わず涙が……と答えれば、なにげに親バカらしい父上は嬉しそうに目を細められた。部屋の中にいた他の者達も自分の返事になんでか嬉しそうな顔である。
――あぁもう、認めるしかないではないか。
自分はあの“千手柱間”なのである、と。
*****
「弟……いや、扉間よ」
「なんでございましょう、姉者」
目の前にはやけに真剣な表情の扉間。
そりゃそうだろう。こんな夜更けに話が有ると言って、人の少ない森の中で顔を突き合わせているのだから。
「簡潔に纏めますと、お姉ちゃんの事を今度から姉者ではなく兄上、もしくは兄者と呼びなさい」
「ええ!? な、なんでですか、姉者!」
いやもう、君の言う事も最もだと思うよ。
自分だって突然そんな事言われたら混乱するもの。
「話すと長いんだけどさ、どうやらお姉ちゃんは他所様どころか一族の者達にも男だと思われているんだよね」
「は!?」
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