第七十七話
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の時代に現れた救国の英雄と、その一生と言う感じですね」
と言うユカリはなにやら感慨深げだ。
「アーサー王伝説の派生みたいな物ですか?」
「いえ、…これは…ううん、そうですね。そう言う事にしておきましょう」
そう言ってパタンと本を閉じ甘粕に返すユカリ。
「魔導書と言う事では無いのですね?」
「そうですね。ただの歴史書ですよ。アナグラムになっているのなら私には分かりませんね…まぁ私の言葉を信じればですけどね」
「そうですなぁ、信じる事にしましょう。それに今の所ユカリさんしか読める方もいなそうですし、害はなさそうですなぁ」
特にユカリには必要な物ではなかったし、一応正史編纂委員会が管理している物品なのだ。返さないわけにも行くまい。
そんな訳で、鑑定の後、甘粕はその本を抱えて正史編纂委員会の保管場所へと移動し、無事に納入されるはずだった。
しかし…
車を降りた甘粕はいつの間にか現れた一人の女性に声を掛けられた。
「あなた…本を持っていますね」
「え?えっと、貴方は一体何者ですか?」
と、問いかける甘粕だが、その全身から嫌な汗がにじみ出る。
相手から放たれる呪力に威圧されているのだ。
外見は金髪碧眼の女性。
枝毛なんて無いような見事なストレートの髪を腰の辺りまで伸ばしている絶世の美女。
「貴方の持っている原書を私に頂けないでしょうか」
丁寧な口調で語っているがその態度からすでにそれは決定事項であり命令であると受け取れる。
甘粕は目の前の女性はまったく外見は違うし、その中身も全然違うと思われるのにどうしてか彼女の印象がユカリと重なった。
だがこの女性はおそらくまつろわぬ神かカンピオーネ、もしくは神祖と呼ばれる存在だろう。
自分なんかとはその存在感が違いすぎると甘粕は本能で感じる。
目の前の彼女に気圧されながら何とか無言を通し、脱出の機会を探るが、自分なんかではどう足掻いても無理なのではないかと錯覚させられる。
「そうですか、では少し手荒なまねをしなくてはなりませんね」
そう言った女性が手を一振りすると甘粕の四肢は光る輪っかによって拘束されてしまう。
「こ、これは!?」
行使された力は呪力の類だ。しかし甘粕はその力の使い方、本質はユカリが護堂を拘束して見せたあれに酷似していると感じた。
四肢を拘束されては抵抗のしようが無い。ゆっくりと近づいた彼女は甘粕から一冊の本を奪い取る。
「ふっ…ふふふ…ようやく…ようやくです」
手にした本を本当に大事な物のように両の腕で胸に抱いた。
その女性はもはや甘粕を見ていない。
女性は突如背中に妖精を思わせる翅を顕現させると重力を感じさせないかのように飛
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