第七十七話
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残暑が厳しい八月下旬。
全国の学生は溜め込んだ宿題を図書館や喫茶店などで仲間内でシェアして書き写している頃合。
ユカリはといえば、宿題なんて物は影分身を使用すれば二日もあれば終了する。
夏休み二日目にして終わらせているので特に問題は無かった。
いつものようにアテナと甘粕が夕食をとりに来ている時、いつもとは違い甘粕が何かを取り出して、見てもらいたい物があるとユカリに手渡した。
「これは?」
「ヴォバン侯爵が日本で滞在していた所から発見されたものです」
渡されたのはハードカバーの一冊の本。
表紙には剣十字の魔法陣。裏表紙には竜王家のマークが入っている。
「若干呪力を感じるが、たいした事はなさそうよな」
と、アテナがユカリが持つ本を見て評した後興味をなくしたのかテレビに視線を戻した。
最近食以外の娯楽にも少し興味が出てきたみたいで、フラッと家にやってきてはテレビを見ていたりしてる。
内容は子供向けアニメが多かったような気がするが、そこはきっと気のせいだろう。
ユカリとしては料理に興味を持ってもらえないかと誘っているのだが、ユカリが調理したほうが早いし美味いとアテナは手伝わない。
それは貢がれて当然の神様のようだった。
さて、話を戻そう。
ユカリは甘粕に渡された物を見てため息をつく。
「……甘粕さんってやっぱり優秀ですよね」
「やはり、ユカリさん関連ですか」
ユカリが数度展開したベルカ式の魔法陣。それを覚えていたのだろう。
「それで?これを私に見せてどうしろと?」
「いえ、もしかしたらユカリさんならこの本の中身が読めるんじゃないかと思いまして」
もちろん、本を開いたからと特に害は無いのは確かめてありますよと甘粕。
「書かれている書体はドイツ文字…フラクトゥールに似ているような気がすると言うことなので、ドイツ語を基本に翻訳をと試みたのですが…」
文化や時代などで作られる言葉もあるし、現代とは意味の異なる言葉もある。現代日本でこの本を読める人が居ないのは仕方の無い事だ。…いや、この世界では何処にも居ないのかもしれない。
ユカリは表紙をめくり本に目を通す。
「書体は古代ベルカ文字…それも末期の物ですね」
「古代ベルカ…ですか?えと、それはどこにあった古代文明なのでしょうか」
「さあ?…戦争に明け暮れて、結局大量破壊兵器で自らの世界を終わらせた、どこか別の世界の話ですよ」
甘粕は訳が分からないと言った表情を浮かべ、それはどこのSFですかとでも言いたげな表情だ。
ユカリはそれ以上語らず本を読み進めた。
「……内容は古代ベルカ末期、全てが混沌とし、空を分厚い雲が覆い、日の光すら通さないような暗黒
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