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戦国御伽草子
壱ノ巻
文の山

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なの、父上!」



「え、あ、いや、なんでも…」



「なんでもないわけないでしょう!何なの、父上!はっきり言わないと…」



あたしは腕を組んでじり、と父上ににじり寄った。



父上が青くなって叫ぶ。



「わ、わかった!」



「最初っから素直にそう言っていればいいのよ」



益々蕾(らい)に似てきよって…。蕾もすぅぐそうやってわしを脅して…」



「今母上の話はどうでもいいのよ。約束、って、何なの?」



「じ、実は、た、高彬(たかあきら)にのう」



「高彬がなんだっての」



「た、高彬におまえをやると約束して…」



「はぁ!?どおいうことよっ!!」



あたしは父上の襟首をがしっと掴んだ。



父上が震え上がる。



「いいやっ!瑠螺蔚や!よく考えてもみい!佐々家は若殿の後見にもついているし、手を組んでおいて、得こそあれ、損は…」



「あたしはそんなことを聞いてんじゃないのよっ!」



あたしはぎりぎりと父上の首を締め付けた。



父上の顔が、青くなったり白くなったりする。



「ぐあっ、瑠螺蔚っ!老い先短い父に何を…」



「なんならここでその先を無くしてあげるわよぉっ!?」



「か、勝手に決めたことは悪いと思っておる!わしも最初は断ったのだ!けど、そう何度も頭を下げられると、わしも、つい…」



「つい、何よ!?」



「う〜っ、る、瑠螺蔚っ!わしは、まだ蕾に会いたくはない〜っ!蕾もまだ来るなといっておる〜っ!」



「気のせいよ!母上はいつでも父上を迎え入れる気でいるわ!手を(こまね)いて待ってるわ、父上!母上に会いたくはないの!?逝ってあげなさいよ〜…」



「瑠螺蔚〜っ!し、死ぬ!本当に死んでしまう〜っ!」



「ち〜ち〜う〜え〜!」



あたしは、ぱっと手を離した。



「父上!あたし、そんなこと、知らないからね!」



あたしはそう怒鳴ると、縮こまる父上を尻目にどかどかと何処へ行くでもなく、怒りのままに歩き出した。



覚悟はしてたけど。してたけどっつっ!よりにもよって、高彬だなんて!



そりゃぁ、そこいらの変な10や20も歳の離れた男よりは、高彬のほうがまだマシだって思うけどさ!



鼻息も荒く歩いていたあたしは、ふと、立ち止まった。



あれ、ここ、離れかしら。



興奮して歩いていたものだから、いつの間にか、離れに
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