第二十九話 二つの顔を持つ男
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第二十九話 二つの顔を持つ男
アクシズはネオ=ジオンの本拠地である。かって一年戦争の終結によりその身を隠したジオンの残党達はこの惑星に潜み再起の時を待っていた。そして先のバルマー戦役において突如として姿を現わし戦いに参加したのであった。
バルマー戦役の折にはジオンにおいて総帥を務め実質的にジオンの独裁者として君臨していたギレン=ザビが指導者となっていた。冷徹かつ知的でカリスマ性も併せ持つ彼は優れた指導者であったが兄弟間の確執により滅んだ。そして彼を滅ぼした妹のキシリア=ザビもまた事故によりこの世を去っていた。これを不慮の事故とするか何かしらの謀略とするかは見解が分かれている。
だがこれによりネオ=ジオンに有力な指導者がいなくなったのは事実であった。これを危惧したネオ=ジオンの高官達はドズル=ザビの忘れ形見ミネバ=ザビを名目的な指導者としハマーン=カーンやエギーユ=デラーズが実質的に取り仕切るという体裁になった。彼等は宇宙においてはティターンズ、ギガノスに次ぐ第三の勢力としてアクシズを中心に展開していた。
「ティターンズが敗れたか」
その中の一室で漆黒の軍服に身を纏った女が報告に来た褐色の肌の派手な服の女にそう問うていた。
「はっ」
その女イリア=パゾムは静かな声でそれに応えた。
「彼等は今北欧に向けて撤退中です。ロンド=ベルはその追撃にかかっております」
「正道だな」
「といいますと」
イリアは漆黒の服を着た赤紫の髪の女の言葉に反応した。
「どういった意味でしょうか」
「戦略において正道だという意味だ」
「正道ですか」
「そうだ。イリア、御前ならどうするか」
「私ですか」
「攻めるのではないのか、彼等を」
「仰る通りです」
答えは決まっていた。イリアはそう言葉を返した。
「今ティターンズもドレイク軍もその力を弱めております」
「うむ」
「叩くのは今が好機です。崩壊させるのは無理でしょうがかなりの痛手を与えることはできます」
「そういうことだ」
それこそがこの女の考えであった。
「だが我々はそれを見ているだけでは駄目だ」
「では」
「そうだ。動くつもりだ」
女はそう言った。
「ミリアルド=ピースクラフトはどうしているか」
「今シロッコのジュピトリスと対峙しております」
「ジュピトリスとか。では動かすわけにはいかぬな」
シロッコのジュピトリスは主立った戦力の殆どを地球に降下させているティターンズにとって宇宙の要ともいえる存在となっていた。シロッコの能力とその戦力はネオ=ジオンも侮れないものがあった。
「それでは他の者を動かすとするか」
「デラーズ閣下の軍はギガノス軍と対峙しているので動かせないそうです」
「それもわかっている」
女の答え
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