第二十九話 二つの顔を持つ男
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いた。祗鎗である。
「見事な最後だったそうです」
「八卦衆らしいか。ならばせめてもの救いか」
「・・・・・・・・・」
祗鎗はそれには答えなかった。俯いて沈黙していた。
「祗鎗」
帝はここで彼の名を呼んだ。
「次はそなたに行ってもらいたい。よいか」
「喜んで」
「そしてロクフェルにも行ってもらいたいのだが」
「ロクフェルもですか」
「何か不服なことでもあるのか?」
「いえ」
祗鎗はそれには沈黙した。
「何もありません」
「ゼオライマーの力は強大だ。二人がかりでなければ相手にならぬかも知れぬ。いや、シ=アエンとシ=タウが既に敗れているな」
「はい」
「油断はできぬ。二人で連携して相手をせよ。よいな」
「御意」
こうして祗鎗の出撃が決まった。彼はそれを受けた後退室した。その後ろに一人の男が現われた。
「貴様か」
「うむ」
それは塞臥であった。彼は不敵な笑みを浮かべていた。
「次の出撃が決まったそうだな」
「それが何かあるのか」
「一つ提案がるのだが」
塞臥はここでこう言った。
「提案?」
「そうだ。俺と手を組むつもりはないか」
「一体どういうことだ」
「そのままだ。俺と手を組めばいいことがある」
「貴様の言っていることがわからぬのだが」
「とぼけられるとはな。ではあらためて言おう」
塞臥は言葉をあらためた。そのうえでまた言った。
「俺につけ。これならわかるな」
「・・・・・・・・・」
祗鎗は黙ってそれを聞いていた。
「帝よりいい目を見せてやるぞ。どうだ」
「塞臥」
祗鎗は彼の名を呼んだ。
「何だ」
「貴様、まさか謀反を企んでいるのではないのか」
「謀反?」
彼はそれを聞いてうそぶくような顔を作った。
「俺がか。どうしてそう思う」
「貴様については前から怪しいと思っていた」
「ほう」
「それならば俺はゼオライマーと木原マサキより御前を先に倒す。わかったな」
「さてな」
彼はこれにはとぼけてきた。
「だが貴様の心はわかった。今はそれでよしとしよう」
「それでいいのか」
「貴様についてはな。ではな」
「・・・・・・・・・」
祗鎗を尻目に彼は姿を消した。その口の端に邪な笑みを浮かべたまま。
彼等もまたそれぞれの思惑があった。それが複雑に混ざり合ったまま戦場に向かう。戦いは一つの色で染められているものではなかった。
第二十九話 完
2005・6・28
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