第二十九話 二つの顔を持つ男
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は迅速でかつ冷徹なものであった。
「あの軍にはアナベル=ガトーやシーマ=ガラハウもいる。そうおいそれとは敗れはしないだろう。如何にギガノスといえどな」
「実はそのギガノスのことですが」
「どうした」
「ギガノスを代表する若手の将校の一人であるマイヨ=プラートが今地球にいるそうです」
「地球にか」
「はい。これは一体どういうことでしょうか」
「わからぬな」
女は元々険のある顔をさらに険しくさせた。
「マイヨ=プラートはギガノスにおいて最高のパイロットと言ってもいい」
「はい」
「ロンド=ベルがいるとしてもだ。グン=ジェム隊に任せておればいいものを」
「それにつきましてはギガノスで何かあるのではないかと言われております」
「それは何だ」
「内部の権力争いではないかというのがもっぱらの噂です」
「権力争いか」
それを聞いた女の目が光った。
「確かマイヨ=プラートはギルトール元帥の派閥だったな」
「その通りです」
イリアはそう答えた。
「それどころか元帥の信奉者であるとも言われております。若手将校がギルトール元帥を崇拝しているのも若手将校の間で人望の高い彼が元帥を崇拝しているからだとも言われております」
「そうか。ならば答えが出たな」
女はそれを聞いてそう呟いた。
「若手はそうだな。だが老人達はどうだ」
「あっ」
イリアはそう言われてハッとした。
「彼等はまた違う考えだな。違うか」
「そうなります」
イリアも事情がわかった。
「ハマーン様の仰る通りです」
「これは当然のことだ」
赤紫の髪の女ハマーン=カーンは不敵に笑いながらそう答えた。
「人は全ての者が一つの考えを持っているわけではないのだからな」
「そうなのですか」
「そうならばどれだけやりやすいか」
ここでハマーンの言葉の色が微妙に変わった。
「私とてそう思う」
その言葉は何かしら苦渋が込められていた。しかもその苦渋の色は一色ではなかった。複雑に混ざり合っているようであった。
「人とはわかりあえない時があるのだ」
「!?」
それを聞いたイリアは首を傾げた。だがハマーンはそれを素早く見抜き言葉を変えた。
「いや、何でもない。気にするな」
「左様ですか」
「そうだ。だがそれでもまだギガノスを滅ぼせるわけではない」
「はい」
「ギガノスに関してはまだ均衡状態を続けるべきだ。ティターンズに対してもな」
「それでは今後は現状維持になるのでしょうか」
「宇宙ではそうなる」
ハマーンは横を見ながらそう答えた。
「宇宙ではな」
「ですが今後は」
「イリア」
ハマーンはここで彼女の名を呼んだ。
「はい」
「時が来れば動くぞ。デラーズ提督に伝えよ」
「何と」
「アナベル=ガトーとシーマ=ガラハウの
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