第二話 幼児期A
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た通り、俺たちは元気よく声を揃えた。
「「お母さん、お仕事お疲れ様! 温泉卵作ったから一緒に食べよう!」」
「あっ…」
手に持っていた卵を、俺たちは母さんに見せる。俺たちのささやかなドッキリ。一生懸命に仕事をして、俺たちのことをいつも見守ってくれている母さんへのせめてものプレゼント。
母さんは一瞬泣きそうな顔をしたが、まるで眩しいものを見るかのようにその目を細めた。すぐに母さんは俺たちを抱きしめる。その手は優しく、太陽のように暖かく、母さんの愛しさが伝わってくるようだった。
「……ありがとう」
俺たちも卵を落とさない様に、母さんにぎゅっと抱きつく。
「ありがとう。アルヴィン、アリシア…!」
俺は転生して、気づいてしまったことがある。
彼女の息子になって、彼女の双子の兄になったことで、わかってしまったんだ。
主人公達の未来が、リリカル物語の全ての始まりが、この家族からだったんだって。彼女達の幸せと俺たち家族の幸せは、決して結びつくことができないものだったんだって。
「お母さん!」
嬉しそうに母さんの背中に手を回す、俺の双子の妹。アリシア・テスタロッサ。
転生してまず、俺はその名前に心底驚いた。そして訪れるであろう未来を想像し、愕然とした。
彼女が始まりだった。彼女の「死」が始まりだったのだ。この少女は普通の女の子だ。元気いっぱいに野原を駆け回る活発で快活な性格、それにかなりの天然が入った少女。家族が大好きな心優しい、笑顔が似合う女の子。
それなのに、彼女は享年5歳で死ぬことが決められていた。
彼女の死が、母を、プレシア・テスタロッサを狂気へと落とした。それは1つの家族の崩壊だった。それは「魔法少女リリカルなのは」という物語の始まりだった。
「…………」
俺は、アルヴィン・テスタロッサは考える。本来いないはずのプレシアの2人目の子どもとして、アリシアの兄として。そして原作を知る者として。
普通原作から、20年以上も前に転生するなんて考えねぇよ。俺の立場上、いずれどちらかを選ばなくてはならない時が来る。そして、どっちを選ぶのかなんて俺はもう、だけど……あぁ、もうやべぇ。改めて考えたら頭が痛くなってきたよ。ずきずきしてきたし、悟りの道でも開いてやろうか、こんちくしょう。
俺はアリシアと母さんから視線を外し、静かに目を閉じる。そこで感じるのは、2人のぬくもりと心地よい心音。俺はそれらに包まれながら、頭痛のする頭を押さえ込むように、静かに身を任せた。
「母さんってマヨと塩ならどっちが好き? しかし、塩も案外いけるな。パサっているが」
「おいしいねー。パサパサだけど…」
「私はどっちも
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