第二十五話 燃ゆる透水、凍る鬼火
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一緒で」
「ふ、時代劇か」
ブンドルが早速キリーの言葉に反応した。
「あの形式美は中々いい。特に東映のそれはな」
「お主時代劇まで見ておったのか」
カットナルがそれに突っ込みを入れる。
「何にでも手を出すのう」
ケルナグールもである。やはりこの三人は一緒であった。
「私は美しいものが好きだ」
「時代劇が美しいのか?」
「そうだ」
彼は答えた。
「あの様式美。あの悪役の見事な死に様にお決まりの台詞。何をとっても」
言葉を続ける。
「美しい」
そして彼もまたお決まりの台詞を言うのであった。薔薇も忘れてはいない。
「やれやれ、どうやら単なる趣味のようじゃな」
「わしはかみさんとオペラを観に行く方がいいわい」
「ケルナグール、お主オペラを観るのか」
カットナルはそれを聞いて思わず声をあげた。
「嘘ではないのか」
ブンドルもである。彼もまた驚いていた。
「おう、メトロポリタンにな」
「なっ、メトロポリタン」
アメリカで最も知られた歌劇場である。ミラノのスカラ座やウィーン国立歌劇場と並ぶオペラのメッカである。
「当然パリも行くぞ」
「何ということだ。嘘ではないのか」
「かみさんが好きでな。わしはほんの付き合いじゃ」
「だろうな」
「だが驚いたな。ケルナグールがオペラを知っているとは」
「御前等わしを何だと思っているのだ?さっきから黙って聞いていれば」
「気にするな」
「単なる先入観だ」
「フン、まあいい。今は時代劇やオペラよりいいものが目の前にあるぞ」
他の二人もケルナグールの言葉に顔を前に向けた。
「わかっておる」
「戦いこそ最高の芸術」
三人はそれぞれの部隊を出してきた。そしてブンドルが言う。
「それでは戦いの曲を奏でよう」
「今日は何がいいですか」
部下の一人が彼に問う。
「そうだな。オペラの話が出たことだし」
「ワーグナーでしょうか」
「ワルキューレの騎行は駄目だぞ」
「はい」
どうやら彼はあの曲は好きではないらしい。
「ローエングリンがいいな」
「ローエングリンですか」
「そうだ」
ブンドルは答えた。ワーグナーの歌劇の一つでありロマン派の代表的な作品である。魔女オルトルートと彼の夫テルラムントの謀略により危機に陥ったエルザ姫を救う為に聖杯の城モンサルヴァートから現われた白銀の騎士。白鳥の曳く小舟に乗って姿を現わしたその騎士ローエングリンとエルザの悲しい愛の作品である。透明で澄んだ音楽の世界に合唱と英雄の歌が聴かれる。タイトルロールともなっているローエングリンはヘルデン=テノールと呼ばれるワーグナーの作品独特のテノールであり難役としても知られている。
「第一幕の前奏曲がいい。あるか」
「はい、こちらに」
部下は一枚のCDを出してき
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