第二十五話 燃ゆる透水、凍る鬼火
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顔をしている。
「鉄甲龍の前だ」
「鉄甲龍」
「そうだ。それもとぼけるか」
「とぼけるも何も」
「では言い方を変えようか」
髪で顔の右半分を隠した女が言った。
「上海を拠点とする国際電脳」
「あの多国籍企業が」
中国を代表するコンピューター関連の企業として知られている。そのオーナーはうら若き美少女であることも有名である。
「それは隠れ蓑に過ぎない」
左半分を隠した女も言った。
「それが我等鉄甲龍だ」
「またの名をバウドラゴンという」
「バウドラゴン」
「私がその主」
少女は静かに言った。
「幽羅帝だ」
「幽羅帝」
「そう。御前に私が乗る筈だったあのマシンを奪われた者だ。そして今度は愛しき者も奪われた」
「マシンを。まさか」
「そのまさかだ」
幽羅帝は言った。
「あのゼオライマーは本来私のものだったのだ。それを御前が」
「僕が」
「十五年前我等を裏切り持ち去った。その欲望の為にな」
「欲望って」
「思い出せないのなら思い出させてやる」
その澄んだ声に憎悪がこもった。
「時間をかけてな。そのうえで殺してやる」
その左右にいる女達もジリ、と動いた。マサトはそれに命の危険を感じた。その時であった。
「!」
部屋の扉が突如として破壊された。そしてそこから美久が姿を現わした。
「マサト君、そこにいたのね!」
「美久!」
美久はマサトに駆け寄って来た。幽羅帝はそれを見てすぐに左右の女達に指示を出した。
「シ=アエン、シ=タウ!」
「はっ!」
名を呼ばれた二人はすぐにそれに応えた。
「あの女を始末せよ!」
それに従い美久に襲い掛かる。まずはシ=アエンが蹴りを繰り出した。
「うっ!」
それが腹を直撃する。だが美久はそれでも立っていた。
「なっ・・・・・・」
「この程度で」
彼女は怯んではいなかった。そして逆に攻撃を繰り出す。
「グッ!」
拳を受けてシ=アエンが退く。そこにすかさずシ=タウが来た。
「ならばこれで!」
手刀を繰り出す。そしてそれで美久を撃とうとする。だが美久はそれをかわした。
「まだっ!」
そして蹴りでシ=タウも退けた。二人はそれで間合いを広げてしまった。
「私達の攻撃を受けて平然としちえるなんて」
「この小娘、一体」
二人は信じられないといった顔をしていた。見たところ二人の動きは相当な手馴れのものであった。だが美久はそれ以上であったのだ。年端もいかない小娘がどうして、二人はそう思っていた。
彼女はその間にさらに前に出ていた。そしてマサトの側に来てその鎖を断ち切った。
「マサト君、大丈夫だった」
「美久、来てくれたんだね」
「ええ」
彼女は微笑んでそれに応えた。
「すぐにここを出ましょ。ゼオライマーで」
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