第二十五話 燃ゆる透水、凍る鬼火
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戻るしかないんだ」
やはり冷たい声でそう述べた。
「いいんですか?」
「ああ。彼はきっと戻って来る。そして」
言葉を続けた。
「ゼオライマーに乗る。彼の心がマサキのものである限りな」
そう言って追おうとはしなかった。結局美久はマサトを追わなかった。
マサトは外を走っていた。たださっき聞いたことを忘れたかったのだ。
「そんな、そんな筈があるものか!」
自分はクローンなどではない、自分は自分だ。彼は自分自身にそう言い聞かせていた。
「僕は秋津マサトだ。それ以外の何者でもないんだ」
言い続けた。そしてまだ走る。
「僕は、僕は・・・・・・」
だがここで全身を鈍い痛みが襲った。
「うっ・・・・・・」
彼は意識を失った。そして前に倒れる。
「この男か」
薄れいく意識の中で女の声がした。
「そうみたいね」
「見たところまだ子供ね」
「そうね」
二人いるようであった。だが何故かその声は似ているように感じられた。
「こんな子供に耐爬が」
(耐爬!?)
マサトにはその名前だけが聴こえた。
(誰なんだろう、それは)
だがそう考える前に意識がさらに薄れ考えられなくなってしまっていた。
(うう・・・・・・)
「連れていきましょう、タウ」
「ええ、お姉様」
こうして彼は意識を失い暗闇の世界に落ちた。そして何処かへと連れ去られてしまったのであった。
目が醒めた。すると彼は縛られ地下の冷たい部屋の中で吊られていた。
「目が醒めたか」
女の声がした。それは少女の声であった。
「君は」
その少女を見る。濃い化粧こそしているが優しげな顔立ちの少女であった。
「木原マサキ」
その少女はその名を呼んだ。
「私を覚えているな」
「覚えているも何も」
吊り下げられながらもマサキは言った。
「君と会うのははじめてなんだよ」
「嘘をつけ!」
「うっ!」
少女の鞭が彼を撃った。その痛みで黙ってしまった。
「一体何を」
「忘れたとは言わせぬ!」
少女は強い声でそう言った。
「木原マサキ」
「またその名前を」
「我が愛しき人を奪った罪、今ここで償わせてやる」
「愛しき人・・・・・・」
「そうだ」
少女は言った。
「先の湘南での戦い、覚えているな」
「あの時の」
「忘れてはいないな」
「うん」
嘘をつくつもりはなかった。正直にそう答えた。
「あの時の変わったマシンに乗っていたのは」
「そうだ、耐爬だ」
少女は答えた。
「耐爬の無念、今ここで晴らしてやる。時間をかけてな」
「待ってくれ、僕は・・・・・・グフッ」
左右に現われた者達に腹を殴られた。そして言葉を止めた。
「言葉を慎め」
そこに黒く長い髪をした二人の女が現われた。見れば同じ
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