第二十話 冥府の王、その名は天
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。
「その男って誰のことなんですか」
「君自身だ」
「僕自身」
マサトはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「僕が・・・・・・どうしたっていうんですか」
「あの男を出すんだ、早く」
「そんなこと言っても」
「思い出せ、あの男を」
「うう・・・・・・」
マサトは言葉を聞くうちに呻きはじめた。頭を抱えてコクピットの中に蹲った。
「思い出したか、あの男のことを」
「ううう・・・・・・」
マサトはまだ呻くままであった。だが沖はそれでも問うた。
「あの男を思い出すんだ」
「くくく・・・・・・」
それを言うとマサトはゆっくりと笑いはじめた。そして顔をあげてきた。
「ふふふ」
マサトは顔をあげながら言った。
「あの男というのは俺のことか?」
ここでマサトの声がした。だがそれはマサトの言葉ではなかった。
「その声は」
沖はそれに反応した。声がした方に顔を向けた。
「マサキか」
「その通りだ」
マサトは答えた。そこにいるのは確かにマサトであった。だが明らかに何かが違っていた。
その表情が違っていた。あのあどけない顔は何処にもなくドス黒い瘴気が漂っていた。顔全体に険があった。それは明らかにマサトの表情ではなかった。
「沖、久し振りだな」
「その言葉、マサキか」
「ふふふ、如何にも」
マサトはその言葉に応えた。
「俺に一体何の用なのだ。久し振りに会ってみれば」
「わかっていると思うが」
沖は臆することなくそう答えた。
「御前自身がな」
「確かにな。あれに乗れというのだろう」
「わかっているのか」
「そしてあの計画を発動させろというのだな」
「御前が考えていた計画だ。違うか」
「ふふふ、そうだ。では再開させてもらうとするか。美久」
「はい」
美久は答えた。
「わかっているな。行くぞ」
「ええ、マサト君」
「マサトか。そうだったな」
「あいつの名は」
彼は面白そうに言った。
「だが今の俺は木原マサキだ。よく(覚えておけ」
「マサト君じゃないの?」
「そうだ」
マサキは言った。
「今の俺はマサキだ。わかったな」
「ええ」
美久は頷いた。やはり何か妙なものを感じていた。
「では行くとするか。もう客が来ていることだしな」
「何、客だと」
「奴等だ」
マサトは一言そう言った。
「御前は感じないのだな、ふふふ」
「何が言いたい」
「あの時からそうだった。どうやら御前は肝心なところが」
「マサト」
沖は彼の名を呼んだ。
「彼等が来ているのなら一刻の猶予もないのではないのか」
「猶予?それは誰に対して言っているのだ」
逆にこう聞き返してきた。
「俺に対して言っているのなら違うといっておこう」
そしてこう言った。
「まあいい。御前は
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