第二十話 冥府の王、その名は天
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鹿なことを言うでない!ハレックよ、狂うたか!」
「私は狂ってなぞいません。閣下、どうかここは地球人達と話し合いの場を」
打たれても彼は言った。
「憎しみ合い、殺し合うだけが道ではありませぬ」
「貴様は余の父がどうなったか知っておるのか」
「はい」
彼は答えた。
「貴様の言う話し合いとやらの席で殺されたのだぞ。それでも貴様は言うのか」
「地球人全てがそうだとは限りません」
ハレックは退かない。彼の信念がそうさせた。
「少なくともあの男は」
「あの男」
それを聞いた周りの者が目を向けた。
「竜崎一矢は」
「何・・・・・・!?」
それを聞いてリヒテルの顔色がまた変わった。
「エリカ様が心を魅かれたのも道理、あの男はそれだけの男であります」
「ハレック、そなたまで言うか」
だが彼の信念はこの時禍となった。リヒテルの怒りをさらに高まらせるだけであったからだ。
「この愚か者が!」
「グッ!」
また打った。今度はうずくまった。
「この愚か者を連れて行け!」
リヒテルは倒れ込んだハレックを前にして兵士達に対してそう言った。
「牢に入れておけ。よいな!」
「ハッ」
それを受けて兵士達が立ち上がってきたハレックを左右から掴もうとする。だがハレックはそれを制した。
「いい。自分でいく」
「そうですか」
「そのまま牢に入っておれ。永久に出ることはないと思え!」
こうしてハレックは牢に入ることとなった。彼が牢に入ると隣から何やら声が聞こえてきた。
「!?」
それは少女の声であった。
「ああ、一矢」
「その声は」
それは彼もよく知る声であった。彼は耳をそばだたせた。
「一矢、貴方は御無事でしょうか。想うのは貴方のことばかり」
「エリカ様」
ここで隣から声がした。
「誰でしょうか」
「私です」
ハレックは壁越しに言った。
「ハレックです。武術指南の」
「ハレック?貴方が」
「はい」
彼は答えた。
「兄上の信頼篤い貴方がどうしてこのような場所へ」
「話せば長くなります。ただ一つ申し上げたいことがあります」
「何でしょうか」
「私は竜崎一矢と会いました」
「一矢と!?」
「はい」
彼は答えた。
「あの人は無事なのですか?」
「ええ。あの男は私が今まで会った中で最高の男でした」
彼はそう言った。
「そう簡単には倒れはしないでしょう」
「ああ、一矢・・・・・・」
エリカは彼の無事を聞いただけでもう胸が張り裂けそうであった。
「よくぞ御無事で」
「エリカ様」
ハレックは言葉を続ける。
「はい」
「私はあの男と会い思いました。地球人があの男の言うような者達であればこの戦い続けてはなりません」
「私もそう思います」
エリカは毅然として
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