第二十話 冥府の王、その名は天
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さか逃がしたというのか」
「その通りだ」
彼は怯むことなくそう答えた。
「敵を逃がしたというのか」
「ハレックは俺の命を救ってくれた」
一矢はそう答えた。
「そんな男を俺は敵として扱うことはできない」
「馬鹿な!」
「それにあの男は誇り高き戦士だ。捕虜となることは望まないだろう」
「何を言っているんだ、一矢」
ピートはいささか激昂してそう一矢に声をかけてきた。
「相手は異星人なんだぞ!」
「それはわかっている」
「敵だ。何を世迷言を!」
ピートは言葉を続けた。
「御前も火星でどれだけの犠牲が出たか知っているだろう」
「ああ」
一矢はそれにも答えた。
「じゃあ何故」
「ピート」
一矢は静かな声で彼に語り掛けてきた。
「何だ」
「俺は父さんをバーム星人に殺された」
「それはわかっていたか」
「ああ。だが俺はバーム星人全てが悪だとは思ってはいない」
「何」
京四郎がそれを聞いて声をあげた。
「御前まだ彼女のことを」
「ああ」
一矢は彼にも答えた。
「俺はエリカを愛している。今でもそれは変わらない」
「だから俺にはわかるんだ。あのハレックという男も」
「寝言もいい加減にしろ!」
遂にピートが感情を爆発させた。
「そんな甘い考えでこの先戦っていけると思っているのか!」
「おい、止めろ」
だが二人の間にサンシローが入って来た。
「一矢とハレックは一対一で戦った。二人にしかわからない理由がある」
「無責任な発言は止めろ!」
ピートは彼に対しても叫んだ。
「御前には地球を守る戦士としての自覚がないのか!」
「あるさ!御前に言われなくともな!」
「!」
サンシローの叫びを聞いて沈黙してしまった。
「だが御前みたいに異星人だからといって牙を剥き出しになんかしない」
「どういう意味だ」
「そのままの意味さ。異星人だから悪だという御前の考えは間違っているんじゃないのか!?」
「何を言ってるんだ、サンシロー。あいつ等は」
「それだ」
サンシロー言いながらここでピートを指差した。
「それじゃあ御前が今批判している奴等と同じだぜ。偏見の塊って意味でな」
「う・・・・・・」
これにはさしものピートも言葉を詰まらせてしまった。だがそれでも口を開いた。
「・・・・・・御前達と話しても無駄だ」
「わからないならいい」
サンシローは吐き捨てるようにしてそう言った。
「そういうつもりで言ったんじゃないからな。正しいことを言ったまでだ」
「御前達と話しても時間の無駄だ」
彼は苛立ちを見せてこう言った。
「だがこのことは大文字博士に報告させてもらうぞ」
「好きにしてくれ」
それでも一矢はそう答えた。
「俺は間違ったことをした覚えはない」
「勝手に
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