第十九話 再会
[20/22]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
とは思っちゃいないさ。けれど彼等とは平和交渉の段階までいっていたんだろう?」
彼は言葉を続けた。
「不幸な事件はあったけれどそれで一方的に拒絶するのはどうかと思うんだが」
「・・・・・・・・・」
ピートは沈黙した。健一はそれを受けて言葉を続けた。
「ピートの言いたいこともわかってるさ。けれど俺はバーム星人と機会があればもう一度話し合うべきだと思っている。その時には」
ここでナデシコの方を見た。
「一矢とエリカさんが地球とバームの架け橋になる・・・・・・。そんな気がするんだ」
「健一」
めぐみ達がそんな彼に声をかけてきた。ピートは沈黙したままである。だが彼もその目はナデシコに向いていた。そこに架け橋があるのだから。
戦場を離脱したバーム軍は海中へと入っていった。そして海底に置かれている基地に戻った。リヒテルはガルンロールから降りるとすぐに司令室に向かった。エリカも一緒である。多くの機械やコンピューターが置かれ多くのバームの者達がつめていた。極めて機能的な司令室であった。
「おひいさま、よくぞご無事でした」
司令室に来るとマルガレーテがすぐにエリカに声をかけてきた。
「マルガレーテ、心配をかけて御免なさい」
エリカもマルガリーテにそう言葉をかけた。その姿はまるで実の親子のようであった。
だがリヒテルは違っていた。彼は妹を厳しい目で見据えながら問うてきた。
「エリカ」
「はい」
「率直に尋ねよう。何故そなたは地球人達とかくも長い間共にいたのだ?」
その声も厳しいものであった。
「若」
そこへマルガレーテが入って来た。
「おひいさまは記憶を失われていて」
「余はエリカに問うているのだ」
だがリヒテルの言葉は厳しいままであった。
「エリカ、余は兄として問うているのではない。地球攻略司令官として問うているのだ。よいな」
「はい」
エリカは答えた。その声からは覚悟が窺えた。
「答えよ、エリカ。何故一緒にいたのか」
「・・・・・・・・・」
だがエリカはそれに答えなかった。ただ兄を見据えているだけであった。
「何故答えぬのだ」
リヒテルはまた問うた。
「言えぬというのか」
「いえ」
だがエリカはここで口を開いた。
「お答えします。私は地球の若者に恋を抱きました」
「何っ!?」
「ああっ・・・・・・」
リヒテルはそれを聞き声を荒わげた。マルガレーテは嘆いた。
「素直に申し上げます。私は今地球の若者と恋に落ちております」
「馬鹿な、我等が父が奴等に謀殺されたのを知っているのか!」
「はい」
エリカは答えた。
「それでも申し上げているのです。私は地球の若者を愛しております」
「まだ言うか」
「何度でも」
エリカも引き下がらなかった。
「ぬうう」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ