第九話
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とを彼は覚えていた。だが、そんな彼を待っていたのは捕虜からの罵声だった。
罵声を受け続け、悠斗の精神は限界に追い込まれていた。それと同時に、彼の中には軍に対する不信感が生まれ始めていた。そして、悠斗はすぐさま行動を開始した。捕虜から情報を集め自分の中で整理していく。そして出た結果は、明らかな矛盾だった。
自分が間違ったことをしているかもしれない。悠斗はそう感じていたが、何もできずに時は過ぎて行った。
それから間もなく、俊司たちが侵攻し手をかした悠斗は、クルトに処罰をくだされ現在にいたる。
「長いようで短い人生だったな」
苦笑いをしながらそう呟く悠斗。だが、ひとつ気がかりな点が残っていた。
「雛さん……」
悠斗が死に際に行った名前『雛』。
雛と出会ったのは悠斗が情報収集を始めたころだった。捕虜に相手にされず途方に暮れていた彼に、最初に話をしてくれたのが彼女だった。彼女は幻想郷とは何かだけでなく、自分たちの日常・歴史をすべて話してくれた。悠斗にとってはそれが唯一落ち着いていられる瞬間だった。
「……」
悠斗は深く考え込むほど、自分が抱いている感情に腹がたっていた。戦争中だというのに捕虜だった彼女と仲良くなり、生まれ始めていた感情に…。
悠斗は雛に恋をしていた。
もちろん、かなう恋ではないことは分かっていた。それでも、そばに入れるだけでも彼にとっては幸福だったのだ。俊司たちが来たときは、彼女が助かることに対する安心感と、もう会えなくなる寂しさを感じていた。ついていこう。そう考えていた自分がいたことも彼は分かっていた。だが、革命軍として幻想郷を支配しに来た彼はそんな資格などないと考え、思いを踏みにじった。
去り際に名前を教えてほしいと雛に言われた時、悠斗は少し複雑な心境になっていた。しかし、それで彼女の記憶にのこるならと考え、悠斗は素直に答えた。その瞬間、人生に対する悔いはなくなっていった。
「……まったく、ばか……だ……よな……」
急に眠気に襲われ意識が薄れていく悠斗。ここで、自分の人生は終りを告げるんだと思っていた。
ゆっくりと目を閉じその時を待つ。
だが、やってきたのは新しい人生ではなく微かな痛みと意識だった。
「うっ……」
口も動く。かすかだが体の感覚が戻っている。悠斗はおそるおそる目をゆっくりと開けていった。
「……え?」
彼の眼に映っていたのは信じられないものばかりだった。
どこかの日本住宅を思いだたせる茶色い天井。白くまぶしく光る照明器具。そして、
「悠斗さん!」
と言いながら涙を浮かべ、安堵の表情を浮かべる彼女
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