九話〜呪い? いいえ、闇魔法です〜3月21日修正
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の代償が必要になるか俺には想像がつかない。
以前異世界にいた頃、戦いの幅を広げるため、ナイフに意思と自立行動能力を30分間付与するだけで掛かった代償は、俺5人分の魔力と一日間の魔力断絶である。30分間付与するだけでこの有様だ。死ぬまで呪いの効果を続けるのはしんどくて、全く以て割に合わないが、あいつが勝手に自責の念で自殺しないようになるなら安いものだと思うことにしておこう。
ちなみに俺のリンカーコアの魔力ランクはルナ曰くAランクでまだ後少しだけ伸びる余地が微妙にあるらしいが、その道理でいくと魔臓の方も同じぐらいの量なのだろう。
さて、手始めに媒体は俺の魔力をしっかりと染みこませた手袋と同じ布にして、俺10人分の魔力を代償とすればどうなるのだろうか。
10日掛けて俺の魔臓から絞りだして結晶化させた、魔力ランクA相当の漆黒のビー玉10個を黒い布に包み、呪いを発動する。呪いのブツを作る場合は、何か変な色の光を出して、ゆっくりと治まれば呪いが成功となる。
ポシュン
「……やっぱ駄目か」
気の抜けた音を出してすっかり灰へと変わってしまった布とどこかに消えた漆黒のビー玉を見ながらため息を吐く。
中々苦戦しそうな課題だ。
「後、約9か月……間に合うのか……?」
―――ねえ、何してたの?―――
「あ? まあ、あれだ。人じゃない者を人に強制的に変える呪い」
そう言うと、唐突にアリシアは目を輝かせ始めた。まあ、大体何を言いたいのか想像はつくが、その言葉に応えることは出来ないだろうな。
―――もしかして……私、生き返ることが出来るの!?―――
「いや、出来ない」
―――っ! ど、どうして!?―――
「残念ながら俺の力じゃ、どうあがいても死者を生き返らせるのは死後6時間までが限界だ。……しかも、その場合に必要な代償は大体の想像はつくが、恐らく俺の命でも足りないだろうな」
俺がするのはあくまでも死者を生き返らせることじゃない。人間じゃないものを人間に変えることなんだ。
―――……ごめん。ちょっと気が動転してたみたい。―――
「……そうかい」
―――だからってただ、幽霊としてふらふら彷徨うと決めたわけじゃないよ―――
アリシアが不意に見せた、何か覚悟を決めた表情とルビーのように綺麗な赤い目に思わず見惚れた俺は、ただ無言で頷くことしか出来なかった。
こうしてこの日の自室での呪いの実験は失敗に終わった。
「温泉?」
「うん。良かったら一緒に来ない?」
朝早く誰もいない教室にて、のんびり読書にいそしんでいると紫髪に白いカチューシャを着けた少女……つまり月村のことだが、その彼女が扉を開けて
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