無印編
第二十二話 裏 後 (なのは、クロノ、プレシア、リンディ)
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笑いながらもなのはに言う。
「なのはちゃん、僕はもう大丈夫だよ」
「本当?」
翔太は、優しいから、なのはを心配させないために言っているんじゃないか? という疑惑が湧き上がってくるが、なのはの確認に強く頷いてくれたことから、なのはは翔太を信じ、ようやく心配を拭う事ができ、少しばかりの笑みを浮かべる事ができた。なのはの笑みを見て、翔太も先ほどよりも笑みを強くしてくれた事がなのはにとって何よりも救いだった。
それから、本当はずっとついていようか、とも思ったが、そうすることはなく、医務の局員が運ぶストレッチャーの上で眠ってしまった翔太を通路の途中で見送って、医務局とは反対側へと踵を返した。なのはにはやらなければならない事ができたからだ。
今、なのはの内心は、怒りという名の炎が轟々と盛大に燃え盛っていた。それは、翔太という心配事と不安がなくなって、翔太が誘拐される場面を見てからずっと燻っていた怒りに火がついただけのことだった。その怒りは当然、翔太を誘拐したプレシア、あんな惨状になるまで殴った使い魔に向いている。そして、もう一人、その怒りは自分自身にも向いていた。
前人未到のSSSランクという魔力を手に入れておきながら、翔太が誘拐されるのを防ぐことができなかった。助ける事ができなかった。殴られているのを見ていることしかできなかった。不甲斐ない。不甲斐ない。不甲斐ない。あれだけの力を望んだのはなぜだ? 翔太と一緒にいるためだ。それを役立てる事ができなかった不甲斐ない自分にもなのはの怒りは向いていた。
それを濯がなければならない。なにより、翔太に言ったのだ。
―――私がちゃんとやっておくから、と。
痛みを与えなければならない。翔太はたくさんの痛みを与えられたのだから。
粛清しなければならない。彼女たちは、なのはにとって一番大切なものを傷つけたのだから。
壊さなければならない。もう二度と翔太を傷つけないように。傷つけようとは思わないように。
そのためには、あの場所に行かなければならない。モニターの向こう側に映る戦場へと。そこへ行くことには普通なら、恐怖を伴うものだが、今のなのはは怒りが心の大部分を占めており、恐怖を感じる隙間などない。だから、なのはは、リンディに宣言するように言う。
「私も、あそこに行きます」
少し驚いたような表情をして、それから考え込むような表情をするリンディ。もっとも、なのはからしてみれば、彼女がどんな答えを出そうが、あの場所に行くことは決定事項だ。リンディに許可を得ようと思ったのは、翔太と「ちゃんとやる」と約束したからだ。この場所の一番偉い人はリンディで、だから、彼女から許可を貰えば、ちゃんとやっていることになるだろう、とそう考えたのだ。
や
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