無印編
第二十二話 裏 後 (なのは、クロノ、プレシア、リンディ)
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望んでいた瞬間が訪れた。翔太がモニターの向こう側に現れたのだ。バインドで縛られているとはいえ、五体満足な翔太の姿が見られてなのはの心は、歓喜に躍る。
「ショウくんっ!!」
だが、その歓喜は、すぐに絶望へと変わる。
翔太がバインドによって吊るされたかと思うと、不意にプレシアの使い魔が、翔太を殴り始めたのだ。初めは顔面、次に腹、わき腹、腕、鳩尾、また顔面。それらを見て、なのはは驚きのあまり声を出す事ができなかった。
―――え?
なのはは状況が理解できていなかった。翔太の無事な姿を見る事ができたと思った矢先、目の前で翔太が、無抵抗に殴られているのだ。しかも、一発ではない。何度も、何度も、何度も。まるでリンチのように容赦なく翔太は殴られ続けていた。
―――やめて……、やめてよぉ……。
翔太が殴られ、モニター越しに、翔太の痛みに耐える声や肺の空気を無理矢理吐き出されるような声は確実になのはの心にダメージを与えていた。だから、茫然自失に近いなのはは、心の中で弱々しく、やめてと訴えることしかできない。
翔太が殴られる場面など見たくはなかった。一刻も早くあの場所から翔太を助けたかった。翔太を助けるためならなんでもするのに、となのはは思った。そんななのはに悪魔の囁きのようにプレシアの声が聞こえる。
『さあ、彼を助けたかったらジュエルシードを渡しなさい』
その誘いになのはが乗らないわけがなかった。彼女の頭の中にはあの状況から翔太を救い出すことしか考えていないのだから。
「本当に? ジュエルシードを渡せば、ショウくんを助けてくれるの?」
『ええ、勿論』
その場の全員の視線が集まっていたことなど、なのはは意に介さない。彼女にとっての最優先事項は翔太であり、彼らのことではないから。だから、必死に翔太と集めたジュエルシードなどどうでもよかった。翔太と天秤に乗せるまでもない。むしろ、あんな石ころごときで翔太が帰ってくるなら安いものだと思っていた。
ジュエルシードはどこにもって行っただろうか? ああ、そういえば、とアースラの一画に安置されていたことを思い出したなのはは、プレシアにジュエルシードを渡すために動くことにした。だが、それを良しとしない者もいる。艦長席の隣に設置された席から立ち上がったなのはの手を掴んだのは、いつの間にか管制塔に来ていた執務官のクロノだった。
「どこに行くつもりだい?」
疑問系で問いながらもクロノはなのはの行き先が分かっているのだろう。固い顔をして、瞳には、なのはを行かせないという強い意志が宿っていた。それは、執務官としての彼のプライドなのだろう。だが、そんなものはなのはにとって何も関係がなかった。
「……邪魔をするの?」
なのはの問い
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