第58話 =てがかり=
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「……99!!…100!!……駄目だな…」
和人とともに家に帰った後、俺はいつもの日課で例のラケットでの素振りをしていた。けれど、いつもの調子が出ない。多分…いや、あの須郷の話した結城姉妹の結婚話が影響してるんだろうなぁ…。
「陸也ー?お風呂だよー」
「…お、ありがとう。直葉さん」
「……また、さん付け」
頭をかきながら「ゴメン」とベランダに出てきた少女に謝る。その少女は眉、肩の上でばっさりと切られた髪は青みがかるほどの黒色の髪をしており、同じ色をした眉はきりっと太く、その下の瞳はやや勝気な印象で男の子めいた雰囲気を与えている。
彼女の名前は桐ヶ谷直葉。SAOで知り合ったキリト―桐ヶ谷和人―の実妹である。
何故、俺とその直葉が話しているのか…説明しておこう。
実は今俺はこの桐ヶ谷家に居候しているのだ。その理由はいくつもあるけれど最大の理由が和人、直葉の母である桐ヶ谷翠さんと俺の母親が高校時代の親友だったというのが一番大きいだろう。
SAOから帰ってきたはいいものの借りていたアパートは家賃等の問題で追い出された形になり今の家のある愛知に帰らなければならない、が来年度から東京でSAOから帰還した学生向けの臨時学校が作られるのでここらへんに住んだほうが何かと都合がいい。と悩んでいたら親のあてで桐ヶ谷家を紹介されたのだ。向こう側も喜んで承諾してくれたのだが申し訳なくなったので家事のほとんどを俺がやる、ということで今に至るというわけだ。
家事を引き受けたので普通の主夫並には料理、洗濯、掃除などが出来るようになってしまったのはうれしいことだが。
で、まだ間違えることもあるがキリトのことは和人、と呼べるようになったのだがその妹には彼女が許可してくれているにもかかわらずいまだにさん付けが抜けない…。どうにかして直そうとはしてるんだけど…
「…和人って入った?」
おれの質問に対して直葉は首を横に振る。
「なら、俺は和人の後で入るよ…」
「わかった。お兄ちゃんに言っとくね」
こっちを見ながらそう言い、部屋の中へと戻っていった。…そういえば、皿洗いしてなかったな…と思い出し俺も続いてリビングへと戻りラケットを適当な場所においてシンクへと向かい、蛇口をひねる。…皿洗いが楽しくなってきたってちょっとやばいかも…。
皿洗いをしてしばらく、和人が風呂に入る気配が無いので2階の部屋に行くと扉が開いていて電気のついていない部屋が見えたので覗いてみると静かな寝息が聞こえた。
「…寝てるのかよ………直葉…もかよ…」
誰も聞いてないのにもかかわらず直葉さんと言いかけるのを飲み込む。優しげな寝顔を見せている和人は今日の午後までの絶望しているような感じは一切感じられなかった。恐らく、直葉が何か言っ
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